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高尿酸血症の治療方法とは

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高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態と定義されています。
血清尿酸値が7.0mg/dLを超えていること自体による自覚症状は認めず、健康診断等で偶然指摘されることが多いです。
高尿酸血症の状態が続くと体内の尿酸プールが増加し、関節や腎尿路系に尿酸塩(尿酸ナトリウム1水和物monosodium uratemonohydrate crystals;MSU)結晶として析出します。析出した結晶によって炎症が惹起されると、激痛を伴う、いわゆる痛風発作が起こります。
 
血清尿酸値の共用基準範囲は、男性3.7~7.8mg/dL、女性2.6~5.5 mg/dLで、高尿酸血症の頻度は、全人口の男性20%、女性5%と報告されており、男性に圧倒的に多い疾患です。高尿酸血症の患者さんの約80%には生活習慣病(高血圧、肥満、耐糖能異常、脂質異常症など)が合併し、1人の患者さんに複数の生活習慣病が重複することが多いです。この背景には、内臓脂肪の蓄積やインスリン抵抗性が関与することが示唆されており、高尿酸血症は、動脈硬化、脳血管障害、虚血性心疾患、心不全などの臓器障害とも密接な関係があると言えます。
今回の記事では、高尿酸血症の治療方法について解説します。
 

高尿酸血症の治療

高尿酸血症の治療においては、心血管疾患などの生命予後に関係する高血圧、肥満、耐糖能異常、脂質代謝異常などととともに、高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を改善することが最も大切です。高尿酸血症が持続することでもたらされる体組織への尿酸塩沈着を解消し、痛風関節炎や腎障害などの尿酸塩沈着症状を回避することが狭義の治療目標となります。
 

痛風と無症候性高尿酸血症

高尿酸血症が長年持続すると、体組織に尿酸塩結晶が沈着して、痛風関節炎や痛風結節、腎障害、尿路結石などの臨床症状が顕在化してきます。この中で、痛風関節炎と痛風結節をきたしたものが痛風、これらのないものが無症候性高尿酸血症と、臨床的には区別されています。
 

痛風の治療について

体組織に沈着した尿酸塩結晶を融解、消失させることが痛風治療の目標です。尿酸塩結晶を体組織から消失させるためには、尿酸の体液中での溶解限界と考えられる6.4mg/dLよりも低い6.0mg/dL未満に血清尿酸値を維持することが重要です。生活習慣の改善が痛風治療の基本ですが、生活指導だけでは血清尿酸値6.0mg/dL未満を達成することが難しいため、尿酸降下薬の投与が必要になります。
  

無症候性高尿酸血症の治療について

無症候性高尿酸血症の患者さんの関節内にも、痛風結節がかなりの頻度で存在することが様々な検査で示されてきているものの、欧米のガイドラインなどでは、特に薬物治療の適応に関して、無症候性高尿酸血症は痛風とは区別される病態とされています。
多くの生活習慣病と同様に、高尿酸血症も遺伝素因に生活習慣の素因が加わって発症しています。過食、高脂肪・高蛋白食嗜好、果糖摂取、常習飲酒、運動不足などの生活習慣は、高尿酸血症の原因となるのはもちろん、肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常、耐糖能異常など、多くの生活習慣病と深く関係します。このため、無症候性高尿酸血症の治療においては、薬物治療よりも生活習慣を是正する食生活の指導が優先して行われます。

 
 

生活指導

痛風・高尿酸血症は生活習慣病です。このため、薬物療法の有無に関わらず、生活指導の役割は大きく、食事療法・飲酒制限・運動の推奨が基本となります。
 

食事療法

肥満度指数や体脂肪率が高くなると、それに伴って血清尿酸値が高いことが研究で報告されており、肥満の解消は血清尿酸値を低下させる効果が期待されます。
生活習慣病すべてに当てはまる食事療法として、適正なエネルギー摂取が重要です。個々の身体活動量や肥満の有無から、適正なエネルギー摂取量は「総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(kg)×エネルギー係数(kcal/kg)」の式※から算出できます。
また、食事中に含まれるプリン体の過剰摂取は血清尿酸値を上昇させ、痛風リスクを高めてしまうため、摂取しすぎないように指導します。食材によりプリン体含有量が異なることを考慮して食事指導をします。プリン体の摂取量は1日400mg程度とすることが推奨されており、食材中の濃度が高くても少量に抑えればよく、逆に、ビールのように濃度は低くても摂取量が多いと影響が大きいため注意します。
 

食品中のプリン体含有量(100mgあたり)

極めて多い
300mg~
鶏レバー、干物(マイワシ)、白子(イサキ ふぐ たら)、あんこう(肝酒蒸し)、太刀魚、健康食品(ビール酵母 クロレラ スピルリナ ローヤルゼリー)など
多い
200~300mg
豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、オキアミ、干物(マアジ サンマ)など
中程度
100~200mg
肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位、魚類など
ほうれんそう(芽)、ブロッコリースプラウト
少ない
50~100mg
肉類の一部(豚・牛・羊)、魚類の一部、加工肉類など
ほうれんそう(葉)、カリフラワー
極めて少ない
~50mg
野菜類全般、米などの穀類、卵(鶏・うずら)、乳製品、豆類
きのこ類、豆腐、加工食品など

※適正なエネルギー摂取量「糖尿病の治療方法とは_総エネルギー摂取量の目安」参照
 

飲酒制限

アルコール摂取と痛風発症のリスクに関する研究で、アルコール摂取量が多いほど痛風の発症リスクが高まることが報告されています。このため、アルコール摂取量が適量を超えないように指導します。
アルコールの過剰摂取は、肝での代謝時に内因性プリン分解を亢進することにより、血清尿酸値を上昇させます。また、アルコール飲料に含まれるプリン体の影響も重要で、特に酵母・発芽由来のプリン体を多く含むビールは、アルコール飲料の中で最も血清尿酸値を上昇させてしまいます。
血清尿酸値への影響を最低限に保つ摂取量の目安は、1日に日本酒1号、ビール350~500mL、ウイスキー60mLとされています。ビールは銘柄によってプリン体含有量が異なるため、摂取量目安に幅があります。
 

運動

運動は、肥満を是正し、メタボリックシンドロームを改善することにより、血清尿酸値を低下させることが期待されます。
ただし、短時間の激しい運動は、ATP分解による尿酸値亢進、腎血流量低下、乳酸生産増加による尿酸排泄低下により、高尿酸血症を誘発します。このため、特に痛風の既往がある患者さんにおいては、低強度の有酸素運動が推奨されます。具体的には、歩行、ジョギング、サイクリング、社交ダンスなど、脈が少し早くなる程度の有酸素運動を1回10分以上、1日合計30~60分程度行うことが適しています。

  
  

薬物治療について

血清尿酸値を低下させることは、痛風の治療や腎不全の進行予防に有用です。近年、種々の生活習慣病(肥満、高血圧、CKD、脂質異常症、耐糖能異常)にも高尿酸血症が関与するという研究報告がなされ、高尿酸血症を含む包括的な治療に関する関心が高まっています。
尿酸降下薬は、プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬、非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬、尿酸排泄促進薬(非選択的尿酸再吸収阻害薬、選択的尿酸再吸収阻害薬)、尿酸分解酵素薬に大別されます。それぞれの薬理作用の特徴から、患者さん個別の病態に最適化した薬剤を選択します。
 

薬剤の種類一般名
尿酸生成阻害薬プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬アロプリノール
非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬フェブキソスタット
トピロキソスタット
尿酸排泄促進薬非選択的尿酸再吸収阻害薬ベンズブロマロン
ブコローム
プロベネシド
選択的尿酸再吸収阻害薬ドチヌラド
尿酸分解酵素薬ラスブリカーゼ

 

まとめ

この記事では、高尿酸血症の治療方法について解説しました。当クリニックの外来診療では内科・血液内科を中心とした診療を行っており、既に高尿酸血症で治療中の患者さんの診療はもちろん、健康診断や人間ドックで「再検査」「精密検査」の通知を受けた後のご相談も承っております。
お身体に不調や不安がありましたら、どんな症状でもお気軽にご来院ください。
 
  

参考文献

一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版]
・臨床検査データブック 2021-2022,発行 2021年1月15日 第1刷,監修 髙久 史麿,
 発行者 株式会社 医学書院

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