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うっ血性心不全とは?

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うっ血性心不全は、心臓のポンプ機能が低下することで全身の血液循環が滞り、日常生活に影響を与える疾患です。国内外で多くの人が悩まされており、放置すると命に関わる場合もあるため、早期発見と適切な対処が大切です。

本記事では、うっ血性心不全の原因、症状、検査方法、治療方法に加え、予防や生活で注意すべきポイントについて詳しく解説します。健康を守るために、まずはこの病気を正しく理解しましょう。

うっ血性心不全の原因

うっ血性心不全の原因は、大きく3つあります。

  • 心疾患
  • 生活習慣病
  • 薬剤の副作用

詳しく解説します。

心疾患

うっ血性心不全の主な原因の一つが心疾患です。冠動脈疾患は、心臓に酸素や栄養を供給する冠動脈が狭くなったり詰まったりする病気で、心筋への血流が不足することで心機能が低下し、心不全を引き起こす可能性があります。

心筋症は心筋が肥厚することで心臓の収縮や拡張がうまくいかなくなり、血液を効率的に送り出せなくなる疾患です。さらに、弁膜症では心臓の弁が正常に機能せず、血液が逆流したり流れが悪くなることで心臓に負担がかかり、心不全が進行します。

これらの心疾患を適切に治療しない場合、うっ血性心不全を発症するリスクが高まります。

生活習慣病

生活習慣病も、うっ血性心不全の大きな要因です。肥満や運動不足は心臓に過剰な負担をかけ、心不全のリスクを高めます。肥満では、血圧が上昇し、心臓は血液を全身に送り出すためにさらに強い力が必要になるため、心筋が徐々に弱っていきます。

また、喫煙は血管を収縮させるだけでなく、動脈硬化を進行させ、心疾患のリスクを増加させます。さらに、アルコールの過剰摂取も心臓に悪影響を及ぼし、うっ血性心不全を引き起こす原因です。

生活習慣の改善は心不全予防の基本であり、運動、健康的な食事、禁煙が大切です。

薬剤の副作用

薬剤の副作用も、うっ血性心不全の原因です。例えば、β遮断薬は血圧を下げる目的で使用されますが、心臓の収縮力を低下させるため、過剰な投与や特定の患者では心不全を誘発する可能性があります(1)。

また、副腎皮質ステロイドは炎症を抑えるのに効果的ですが、長期間の使用により体内に水分や塩分が溜まりやすくなり、心臓に負担がかかります。さらに、解熱消炎鎮痛薬(NSAIDs)の過剰使用は腎臓に悪影響を及ぼし、体液貯留や高血圧を引き起こすため、心不全のリスクを高める可能性がある薬剤です。

うっ血性心不全の症状

うっ血性心不全の症状は3つあります。

  • 呼吸困難
  • 夜間多尿
  • 末梢性浮腫

それぞれ詳しく解説します。

呼吸困難

うっ血性心不全の代表的な症状の一つが呼吸困難です。代表的な呼吸困難の症状は3つあります。

労作時呼吸困難運動や階段の上り下りといった軽い負荷でも息苦しさを感じる
起座呼吸横になると悪化し、座ると改善する
発作性夜間呼吸困難夜間に突然発生する呼吸困難

これらは心臓のポンプ機能の低下と、それに伴う肺や全身の血液循環の異常が原因です。呼吸困難は生活の質を大きく低下させるため、早期治療が必要です。

夜間多尿

うっ血性心不全では、夜間に尿意が頻繁に訪れる夜間多尿が特徴的です。日中、心臓が血液をうまく循環させられないため、下半身に血液が滞留し、体液が溜まります。その状態で夜間に横になり、身体が水平になると体液が循環し、腎臓の血流が増加します。結果的に、尿の生成が促され、夜中にトイレへ行く回数が増えるのです。

この症状は睡眠の質を低下させ、疲労感を増加させる要因となります。特に夜間多尿が頻繁に起きる場合は、心不全が進行している可能性があるため、早急な受診が大切です。

末梢性浮腫

うっ血性心不全では、足や足首などの末梢部位に浮腫が見られる症状です。これは、心臓のポンプ機能が低下することで、血液や体液が末梢に滞り、体内に余分な水分が蓄積するため発生します。心不全が進行すると、浮腫の範囲や重症度が増加する傾向です。

このような症状は体液量の調整が十分に行われていないことを示しており、利尿薬や心不全治療薬の使用を検討する必要があります。

うっ血性心不全の検査

うっ血性心不全では、3つの検査を実施します。

臨床所見
画像診断
血液検査

詳しく解説します。

臨床所見

うっ血性心不全では、患者の症状や身体所見から診断の手がかりを得ることが重要です。主な症状として息切れや呼吸困難が挙げられ、特に横になったときに症状が悪化する「起座呼吸」は特徴的です。また、末梢の血流が滞ることで手足の浮腫が見られることも多いです。夜間頻尿は、日中に体内に溜まった余分な液体が横になることで尿として排出されるために起こる現象です。さらに、進行した場合には、倦怠感や食欲低下など全身症状が現れることがあります。これらの症状を総合的に評価することが、診断の第一歩となります。

画像診断

画像診断はうっ血性心不全の原因や重症度を評価するために必要です。

胸部X線検査心拡大(心胸郭比の増加)や肺うっ血、胸水の有無を確認するために使用します。
心エコー検査心エコーは、うっ血性心不全の診断において一般的で有用な検査方法です。特に、左室駆出率(EF)を測定することで、心不全のタイプ(収縮機能障害型または拡張機能障害型)を分類できます。
CTスキャン心臓の構造的異常や冠動脈疾患の評価に使用されます。特に急性症状がある場合や他の疾患との鑑別が必要な場合に有用です。
心電図心不全の進行度や治療効果を評価するための重要な指標です。不整脈や心筋虚血の有無を確認します。

上記の検査を実施して、重症度の評価や治療方針を決定します。

血液検査

血液検査では、心不全の診断や予後評価に役立つ様々な指標を測定します。評価項目と基準値は以下の通りです(2)。

ナトリウム利尿ペプチド(BNP)18.4 pg/mL以下心室で合成される心臓ホルモンで、心臓に負荷がかかると分泌されます。心不全の診断や重症度評価に用いられる。
NT-proBNP55 pg/mL以下心臓から分泌されるホルモンの一種で、心不全の診断や重症度の評価に用いられる。
トロポニン0.014ng/mL以下心筋損傷を示す指標で、急性心不全や慢性心不全の予後予測に用いられる。
電解質Na:135~145 mmol/L
K:3.5~5.0 mmol/L
うっ血性心不全では、電解質の低下が頻繁に見られる。
肝機能AST:10~40 IU/L
ALT:10~45 IU/L
ビリルビン:0.2~1.2 mg/dL
肝臓への血流が滞ることで肝機能異常が生じるため、数値が高くなる。
腎機能クレアチニン:
BUN:8~20 mg/dL
心不全では腎血流が低下するため、クレアチニンの低下が見られる。
炎症マーカーCRP:0.3 mg/dL以下炎症反応の指標となるタンパク質で、心筋壊死や炎症性疾患の発症を示唆する炎症マーカー。
Dダイマー1.0 μg/mL以下うっ血性心不全では、血流の停滞や静脈圧の上昇が原因で、Dダイマーの値が上昇し、血栓形成のリスクが高まる。

これらの検査結果を総合的に考え、患者ごとに適切な治療方針を立てます。

うっ血性心不全の治療方法

うっ血性心不全の治療は「手術療法」と「薬物療法」の2種類に分けられます。それぞれ詳しく解説します。

手術療法

うっ血性心不全の手術療法は、原因疾患に応じて治療内容が異なります。例えば、弁膜症が原因の場合、弁置換術や弁形成術を実施します。この手術は、異常な弁の機能を回復させ、心臓内の血液の流れを正常化するためです。

一方、心筋梗塞が原因となっている場合は、冠動脈バイパス手術や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)といった治療が行われます。これらの方法は、詰まった冠動脈を再開通させ、心筋への血流を改善することが目的です。

薬物療法

薬物療法は、症状の緩和、疾患進行の抑制などの目的で行われます。以下で具体的な治療薬とその効果について解説します。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬血管を拡張し心臓の負担を軽減する効果があり、心不全の進行を抑制します。
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)ACE阻害薬と同様の効果を持つが、空咳の副作用が少ない。
β遮断薬心拍数をコントロールし、心筋の酸素需要を減少させる効果。
利尿薬体内の余分な水分やナトリウムを排出し、浮腫や肺うっ血を改善します。
SGLT2阻害薬ナトリウムとグルコースの再吸収を抑制し、利尿作用を発揮します。心不全の予後改善に有効です。

これらの薬剤は、患者の病態に応じて組み合わせて処方されることが一般的です。薬物療法の適切な実施は、生活の質(QOL)の向上や予後改善につながります。

うっ血性心不全の予後

うっ血性心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、体内の血液循環が正常に行われなくなる病態です。心不全全体の5年生存率は約40〜60%と予後不良です(3)。

症状が重篤化するとうっ血が進行し、肺や下肢にむくみが現れるため、生活の質(QOL)にも大きく影響します。また、心不全の急激な悪化を繰り返すことで予後不良のリスクを高めます。そのため、適切な薬物療法や、生活習慣の改善が大切です。患者の状態に応じた適切なケアが、生命予後を延ばす鍵となります。

うっ血性心不全の生活で気を付けること

うっ血性心不全の方は、生活習慣に気を付ける必要があります。具体的には以下の通りです(4)。

・過剰な塩分や脂質を控える。(1日の塩分摂取量を6g未満)
・食物繊維を摂取して便通をよくする。(利尿薬の副作用で便秘になりやすいため)
・喫煙、アルコールは避ける。
・適度な運動習慣を身に着ける(1日30〜60分、週3〜5回ほどの有酸素運動)

これらの習慣に気を付けて生活しましょう。

うっ血性心不全を理解して症状をコントロールしましょう

うっ血性心不全は心臓のポンプ機能が低下し、全身への血液循環が不十分になる病態です。その原因には心疾患(冠動脈疾患、心筋症、弁膜症)や生活習慣病(肥満、喫煙、アルコールの過剰摂取)、薬剤の副作用があります。症状として、呼吸困難、夜間多尿、末梢性浮腫などが挙げられ、生活の質に大きく影響します。

治療は、薬物療法(ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬)や手術療法(弁置換術、冠動脈治療)を組み合わせて行い、生活習慣の改善(塩分制限、禁煙、適度な運動)も重要です。
適切な治療とケアにより、予後を改善し、症状をコントロールできます。

【参考文献】
1.厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル『うっ血性心不全』
URL:https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1k05.pdf
2.日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』
URL:https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf
3.日本内科学会雑誌第103巻第3号 北風 政史『心不全は心臓の病気か?』
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/103/3/103_681/_pdf
4.Jpn J Rehabil Med 2020;57:1126-1130 小西 治美『心不全疾患指導の実際とエビデンス』
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/57/12/57_57.1126/_pdf

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