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糖尿病になりやすい人の特徴は?

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日本の40歳以上の3人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍と言われています。
糖尿病を放置すると、失明や人工透析が必要になるなど、健康的な生活を送ることが困難になります。
糖尿病の進行を抑えるために、予防や治療に関する正しい知識を持つことが大切です。
今回は医師の視点から、糖尿病になりやすい人の特徴についてわかりやすく解説します。

糖尿病とはどんな病気?

糖尿病とは、血液中の血糖値(ブドウ糖の濃度)が高くなる病気です。
血糖値が高くなると、血液から腎臓を介して尿中に糖分が排出されるため「糖尿病」と言われています。
しかし、尿に糖分が出ること自体が体に悪影響を及ぼす訳ではありません。
体を構成する細胞内ではエネルギー源として重要なブドウ糖ですが、血液中では血管を傷つけ、動脈硬化を引き起こします。
血管が脆くなると、腎臓、心臓、脳などに影響を及ぼし、腎不全、心筋梗塞、脳梗塞など生命に関わる重大な疾患の原因となります。
血糖値が高くなる原因は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きに問題が生じることです。
インスリンは血液中のブドウ糖を細胞へ取り込む役割を担っています。
しかし、膵臓からインスリン分泌が低下したり、細胞内でインスリンの効きが悪くなると血液中のブドウ糖濃度が上昇し、「糖尿病」を発症します。

糖尿病は大きく2つのタイプに分けられます。

2型糖尿病

2型糖尿病は生活習慣の乱れが原因で発症し、糖尿病患者の約90%が2型糖尿病です。
遺伝的な要因に加え、過食や運動不足による肥満、ストレスなどが発症の原因になります。
肥満は糖尿病のリスクを高めますが、日本人は標準体重の人でも糖尿病になりやすい傾向があるので注意が必要です。
2型糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌機能低下や細胞内でインスリン作用が低下する(インスリン抵抗性)ことによって引き起こされます。

1型糖尿病

1型糖尿病患者は膵臓のβ細胞が破壊されることでインスリンがほとんど、あるいは全く作ることができなくなります。
主に小児から青年期に発症することが多く、1型糖尿病は全糖尿病患者の5%と言われています。
インスリン分泌不足が原因の糖尿病のため、生命維持のために薬物を使用しインスリンを補充する必要があります。

インスリンの分泌低下と抵抗性とは?

血糖を細胞へ取り込み、血糖値を下げる働きをもつ「インスリン」。
糖尿病患者におけるインスリン機能低下の原因は、インスリンの分泌低下と抵抗性の2つに分類されます。

インスリン分泌低下

インスリン分泌機能が低下する原因は、膵臓機能の低下により起こります。
血糖を細胞へ取り込むためのインスリン量が不足し、血液中に糖が溢れた状態になります。
膵臓機能が低下する要因は以下の通りです。

・遺伝的因子
・生活習慣の乱れからくる高血糖状態(糖毒性)
・加齢

インスリン抵抗性

インスリン抵抗性とは、十分な量のインスリンが分泌されているにも関わらず、インスリン作用の低下により細胞へ血糖の取り込みを困難にする状態のことです。
食べ過ぎや運動不足の低下により内臓脂肪が増加すると、インスリンの働きが低下します。
インスリン抵抗性が続くと膵臓へ負担がかかり、上記で説明したインスリンの分泌低下が起こります。
インスリン抵抗性の要因は以下の通りです。

・運動不足
・高脂肪食
・肥満
・ストレス
・加齢

規則正しい食事と適度な運動は、膵臓機能やインスリン作用を高め、細胞へ血糖の取り込みを促進します。

糖尿病の症状とは?

糖尿病が進行し、血糖値が著しく高くなると、喉の渇き、多飲、多尿、全身のだるさ、体重減少などが起こります。
しかし、糖尿病の初期は症状が出現しないことが多いです。
症状があっても糖尿病特有の症状とは気付かず、病気が進行する恐れがあります。
早期から治療を開始することで、糖尿病の進行や将来起こる可能性のある合併症を予防することができます。
自覚症状がないからといって治療を受けずにいると、糖尿病が進行した状態では網膜症による失明や腎臓機能の低下により人工透析が必要になる可能性があります。
さらに、脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる合併症を引き起こす恐れもあります。
早期発見のために定期健康診断を受けたり、気になることや心配なことがある場合は早めに医師に相談しましょう。

こんな人が糖尿病になりやすい!

以下に当てはまる人は、将来糖尿病になる可能性があるので注意が必要です。

1家族や親戚に糖尿病の人がいる
2運動不足
3肥満
4食べすぎてしまう
5心身にストレスがある
640歳以上

糖尿病の大半を占める2型糖尿病は、遺伝的要因と生活習慣の乱れが組み合わされ発症します。
遺伝的に糖尿病になりやすい体質の人がおり、家族や親戚に糖尿病患者がいる場合は、特に生活習慣の管理が重要です。
糖尿病の要因として、最も多いのは肥満です。
食べ過ぎや運動不足によって内臓脂肪が増加すると、内臓脂肪からインスリン作用を低下させる物質が出てくることがわかっています。
ストレスも糖尿病の大きな要因です。
強いストレスを受けると、脳からアドレナリンやコルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。
これがインスリンの作用を弱めてしまうため、血糖値が上昇してしまいます。

糖尿病と診断されるまでどのような検査があるの?

糖尿病の診断には、血液検査・尿検査・問診が行われます。
その中で代表的なものを解説します。

検査項目説明
空腹時血糖値10時間以上何も食べていない状態で測定する血糖値
75g経口ブドウ糖負荷試験 (75gOGTT)水に溶かしたブドウ糖液を飲み、その後血糖値の変動を調べる検査
HbA1c直近2ヶ月の血糖の状態を調べる血液検査
尿糖尿中の糖を調べる尿検査
血中インスリン Cペプチド (尿検査)インスリン分泌機能を調べる検査

糖尿病の予防法と治療法

糖尿病は生活習慣を改善することで予防ができます。
具体的には以下の通りです。
・食生活を整える
・適度に体を動かす
・ストレスを溜めない
・適正体重を保つ

糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法により適正な体重コントロールを行い、インスリンの効きを良くすることです。
食事療法と運動療法を行っても血糖値が改善されない場合には、内服薬や注射による治療を行います。

食事療法はなぜ大切か?

食事療法により、摂取エネルギーが適正に保たれ体重をコントロールできるとインスリンの分泌能力や効きが改善します。
食事療法をするだけで、糖尿病を適正にコントロールできたり、薬物療法をしている場合には薬の量を減らすことができる可能性があります。
一日の活動に必要な摂取カロリーは、身長・肥満度・活動量をもとに計算します。
食事は偏りなく、ビタミン・ミネラル・脂質・タンパク質・炭水化物をバランスよく摂取することが大切です。
塩分の過剰摂取は高血圧の原因となるため、糖尿病患者の合併症リスクを高める可能性があります。
食後の血糖値上昇を緩やかにするために、食物繊維を多く含んだ野菜を先に食べ、次にタンパク質、最後にご飯などの炭水化物をゆっくり噛んで食べましょう。
また、食事時間を毎日一定にすることも血糖値を安定させるために重要です。
過度な飲酒や喫煙は、糖尿病を悪化させる可能性があります。
適正な飲酒量は1日1合、純アルコール量にして約20g程度とされています。
血糖値を良好に保つために適度な飲酒と禁煙を心がけましょう。

運動療法はどのように行うか?

糖尿病患者へ効果的なのは、全身の筋肉を使う有酸素運動です。
具体的には散歩・ジョギング・ラジオ体操・水泳などを行います。
有酸素運動と合わせて、週2〜3回程度のレジスタンス運動を行うことが推奨されています。
レジスタンス運動とは、重りなどを使用し筋肉に負荷をかけて行う運動のことです。
例として、スクワットや腕立て伏せ、ダンベル運動などがあります。
食後に運動をするとブドウ糖や脂肪の利用が増加し、食後の血糖上昇が抑えられます。
中性脂肪が低下すると、HDL(善玉コレステロール)が増加し、高血圧の人は血圧が下がる効果もあります。

ストレスが糖尿病を進行させるのはなぜ?

ストレスは糖尿病の悪化に大きく関係しています。
ストレスにより、血糖値を上昇させるホルモンである「アドレナリン」や「コルチゾール」が分泌されます。
これらのホルモンは、血圧と血糖値を上昇させる作用を持っています。
また、ストレスが生じると生活習慣が乱れ、暴飲暴食、アルコール多飲、喫煙などを誘発し糖尿病をさらに進行させます。
ストレスはインスリン作用を低下させ、血糖値の低下を抑制します。
結果として高血糖状態が持続し、糖尿病の悪化に繋がります。
適切なストレス対策を生活習慣の改善と併せて行うことは、糖尿病の進行を抑える上で重要です。

さいごに

家族や親族に糖尿病患者がいる場合や、肥満、慢性的な食生活の乱れ、運動不足、ストレスなどが原因で糖尿病が発症し、病気が進行する恐れがあります。
糖尿病を放置すると気付かないうちに悪化し、生命に関わる重大な合併症を引き起こす可能性があります。
糖尿病の予防や進行を抑えるために、生活習慣の改善や定期的な健康診断などの対策が不可欠です。
ご自身の健康状態について気になることや心配なことがある方は、お気軽に当院までご相談ください。
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よくある質問

Q:糖尿病は一生治りませんか?
A:糖尿病は病気になる前の状態に戻ることは難しく、いわゆる「完治」はしません。
しかし、糖尿病ではあるが、健常者と同じような暮らしや生活の質を維持していくことを目指すことは可能です。
Q:糖尿病でも長生きできますか?
A:糖尿病患者は健常者よりも約7〜10年ほど平均寿命が短いことがわかっています。
しかし、治療開始が早ければ早い程その後の状態が良くなることがデータ上明らかになっており、食生活や適度な運動など生活習慣を改善することが寿命を伸ばす上で大切です。

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