
あなたは体重の増加に悩んでいませんか?
甲状腺機能低下症では、痩せにくくなったり、太りやすくなったりすることがあります。
今回は、橋本病による甲状腺機能低下と体重の関係について、より深く理解し、健康的な体重管理を実現するための情報を提供します。
甲状腺機能低下症と体重の関係:太りやすくなるメカニズム
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌量が減少し、体の代謝が低下する病気です。
甲状腺ホルモンは、私たちの体の様々な活動を調節する重要な役割を担っています。
その中でも、エネルギー代謝を促進し、体温を維持する役割は、体重に大きく影響します。
甲状腺ホルモンの役割:代謝と体重の関係
代謝とは、体の中で常に行われている物質の分解と合成の働きのことを指します。
私たちが健康を保ち、エネルギーを効率よく使えるのは、この代謝が適切に機能しているからです。
そして、この代謝をコントロールしている重要なホルモンの一つが「甲状腺ホルモン」です。
甲状腺ホルモンは体のさまざまな細胞に働きかけ、代謝のスピードやエネルギーの使い方に深く関わっています。
例えば、甲状腺ホルモンは基礎代謝を高める働きを持っています。
基礎代謝とは、呼吸や心拍、体温の維持など、生命活動を維持するために最低限必要なエネルギー消費のことです。
甲状腺ホルモンが活発に働くと、細胞の活動が促進され、何もしていない状態でもより多くのエネルギーを消費するようになります。
これにより、太りにくく痩せやすい体質が維持されやすくなるのです。
また、甲状腺ホルモンは脂肪の分解を促進し、エネルギーとして活用しやすい状態に変える作用も持っています。
この働きによって、体に蓄積された脂肪が効率よく燃焼され、体重のコントロールがしやすくなります。
さらに、糖質の代謝にも関与しており、食事から摂取した糖質をスムーズにエネルギーへと変換する力があります。
その結果、血糖値の急激な上昇が抑えられ、余分な糖が脂肪として蓄えられるのを防ぐことにもつながります。
このように、甲状腺ホルモンは代謝を通じて、体重の維持や健康管理に大きく貢献しているのです。
そのため、甲状腺ホルモンの分泌が不足すると代謝が低下し、太りやすく痩せにくい体質になる可能性があるため、日常的にホルモンバランスを意識することが大切です。
甲状腺ホルモンの減少が引き起こす代謝の低下
甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの分泌量が不足することにより、正常な代謝の働きが弱まってしまいます。
本来、甲状腺ホルモンは基礎代謝を高めたり、脂肪や糖質を効率よくエネルギーに変換したりする重要な役割を担っていますが、その作用が十分に発揮されなくなると、さまざまな代謝機能が低下してしまうのです。
まず、基礎代謝が低下すると、体が日常的に消費するエネルギー量が減ってしまいます。
そのため、これまでと同じ食事量でも余ったエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなり、太りやすい体質になってしまう可能性があります。

また、脂肪を分解してエネルギーに変える力も弱まるため、脂肪の燃焼効率が落ち、体内に脂肪がたまりやすくなります。
たとえ運動をしても、脂肪がうまくエネルギーに変換されないことで、思うように体重が減らないという状態が続くこともあります。
さらに、糖質をエネルギーとして活用する働きも低下するため、血糖値が上がりやすくなります。
血糖値の上昇はインスリンの働きを鈍らせ、インスリン抵抗性を引き起こしやすくなります。こうした状態は、脂肪の蓄積をさらに促進し、肥満や生活習慣病のリスクにもつながっていきます。
このように、甲状腺機能が低下することで代謝全体が鈍くなり、その結果として体重の増加が起こりやすくなると考えられています。
基礎代謝の低下と体重増加の関係
基礎代謝は、安静時でも消費されるエネルギーのことです。
年齢や性別、筋肉量などによって個人差がありますが、甲状腺機能低下症では、基礎代謝が低下することで、消費カロリーが減少し、太りやすくなってしまいます。
例えば、20代の女性の場合、基礎代謝は約1200kcalと言われています。
しかし、甲状腺機能低下症によって基礎代謝が10%低下すると、1日約120kcalの消費カロリーが減ることになります。
これは、ご飯1杯分(約250kcal)に匹敵するエネルギー量です。
このように、基礎代謝の低下は、体重増加に大きく影響すると言えるでしょう。
橋本病による甲状腺機能低下と体重増加:症状と注意点
橋本病は、自己免疫疾患によって甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌量が減少する病気です。
橋本病による甲状腺機能低下は、徐々に進行することが多く、初期段階では自覚症状がない場合もあります。
しかし、進行すると、体重増加以外にも様々な症状が現れます。
体重増加以外にも現れる症状:疲れやすい、便秘、冷え性など
橋本病による甲状腺機能低下では、体重増加以外にも、以下のような症状が現れることがあります。
- 疲れやすい
代謝が低下するため、エネルギー不足になりやすく、疲れを感じやすくなります。 - 便秘
腸の運動が鈍くなるため、便秘になりやすくなります。
便秘は、腸内環境の悪化や体重増加に繋がります。 - 冷え性
基礎代謝が低下するため、体温が低くなりやすく、冷えを感じやすくなります。 - むくみ
代謝が低下するため、水分が体内に溜まりやすく、むくみやすくなります。 - 肌の乾燥
代謝が低下するため、ターンオーバーが遅くなり、肌が乾燥しやすくなります。 - 髪の毛が細くなる
代謝が低下するため、髪の毛が細くなったり、抜けやすくなったりします。 - 爪がもろくなる
代謝が低下するため、爪がもろくなったり、割れやすくなったりします。 - 月経不順
ホルモンバランスが乱れるため、月経が不順になることがあります。 - うつ症状
代謝の低下やホルモンバランスの乱れが原因で、うつ症状が現れることがあります。
これらの症状は、甲状腺機能低下症の初期段階では、他の病気と間違えやすい場合があります。
そのため、少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
気づきにくい体重増加:徐々に増える、見た目の変化が乏しいなど
橋本病によって甲状腺の働きが低下すると、体重は少しずつ増加していくため、自分では気づきにくいことがあります。
さらに、脂肪が増える一方で筋肉量が減少するため、見た目にはあまり変化が現れず、増えた体重を実感しにくいケースもあります。
たとえば、1〜2kgほどの増加であれば、鏡を見ても違いが分からないということも珍しくありません。
とはいえ、体重の増加は生活習慣病のリスクを高める要因となるため、見過ごさずに注意を払うことが大切です。
体重の変化に気づきにくい場合でも、こまめに体重をチェックしたり、体組成計を使って筋肉量や体脂肪率を確認したりすることで、早期に変化を把握できます。
また、「最近服がきつく感じる」「いつものサイズが合わなくなった」といった日常のちょっとした違和感も、体重増加のサインとして見逃さないようにしましょう。

甲状腺機能低下症のダイエット:痩せにくい原因と対処法
甲状腺機能が低下していると、代謝が落ちてしまうため、ダイエットがうまくいかないと感じる方も多いでしょう。
しかし、適切な方法を選べば、無理なく健康的に体重を減らすことは可能です。
甲状腺機能低下症が痩せにくい理由とは
甲状腺機能低下症の方がダイエットに苦戦しやすいのには、いくつかの理由があります。
まず、甲状腺ホルモンが不足すると、基礎代謝が低下し、体がエネルギーを消費しにくい状態になります。
さらに、脂肪を分解してエネルギーとして利用する働きも鈍くなり、その結果、脂肪が燃えにくく体内に溜まりやすくなります。
また、ホルモンの減少は食欲にも影響を与えることがあり、代謝の低下によってエネルギー不足を感じやすくなると、それを補おうとして食べ過ぎてしまうことがあります。
このように、代謝の落ち込みは消化器系の働きにも悪影響を及ぼし、腸の動きが鈍くなることで便秘を引き起こすケースも少なくありません。
便秘が続くと腸内環境が乱れやすくなり、その結果、体重がさらに増えやすくなる可能性もあります。
このような複数の要因が重なることで、甲状腺機能低下症の方は、一般的な体質の人に比べて体重を減らすのが難しく感じることが多いのです。
効果的なダイエット方法:食事療法、運動療法、薬物療法
甲状腺機能低下症のダイエットは、食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせることが重要です。
食事療法
甲状腺機能低下症におけるダイエットでは、バランスのとれた食事を心がけることが重要です。特に以下の点を意識しましょう。
◎PFCバランスの調整
PFCとは、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の略称で、それぞれの栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
・タンパク質
体重1kgあたり1gを目安に摂取。
筋肉の維持や修復に不可欠です。
鶏肉、魚、卵、大豆製品(豆腐・納豆など)がおすすめです。
・脂質
体重1kgあたり0.8gを目安に摂取。
エネルギー源として重要であり、脂溶性ビタミンの吸収にも関与します。
・炭水化物
残りのエネルギーを炭水化物で補いますが、過剰摂取は脂肪蓄積に繋がるため、適量に抑えましょう。
◎低糖質
糖質を控えることで血糖値の急上昇を防ぎ、脂肪の蓄積を抑制します。
・ご飯類
白米ではなく、玄米や雑穀米に置き換える。
・パン類
食パンではなく、全粒粉パンやライ麦パンがおすすめ。
・おやつ
甘いお菓子ではなく、果物やナッツなどを選ぶと良いでしょう。
◎高タンパク質の摂取
筋肉量を維持・増加させることで基礎代謝を上げ、太りにくい体を作ります。
・肉類
鶏肉や豚肉、魚を積極的に。
・卵
良質なタンパク質源として1日1~2個を目安に。
・大豆製品
植物性タンパク質が豊富で、消化にも良いです。
◎食物繊維の摂取
腸内環境を整えることで、便秘の改善と代謝のサポートが期待できます。
・野菜、海藻、きのこ類、玄米などを積極的に取り入れましょう。
運動療法
代謝を促進するためには、運動の継続が不可欠です。
体調に合わせて、無理なく取り組みましょう。
◎有酸素運動
有酸素運動は脂肪を効率よく燃焼し、体重減少をサポートします。
・ウォーキング
毎日30分以上、軽く汗をかく程度を目安に。

・ジョギング
ウォーキングに慣れてきたら取り入れる。
・水泳
全身運動で、関節への負担が少ないのが特徴。
・自転車
屋外でも室内でも行える継続しやすい運動です。
◎筋力トレーニング(筋トレ)
筋力トレーニング(筋トレ)は筋肉量を増やすことで、基礎代謝を高めます。
・スクワット:下半身の筋力強化。
・腕立て伏せ:上半身の筋力強化。
・腹筋運動:体幹の強化と姿勢改善に有効。
◎ヨガ
ヨガは体の柔軟性向上とストレス緩和に役立ちます。
また、呼吸法による代謝促進も期待できます。
・太陽礼拝:全身のストレッチに効果的。
・三角のポーズ:体幹を整え、姿勢改善にも。
・戦士のポーズ:下半身強化とバランス感覚の向上。
薬物療法
甲状腺機能低下症に対しては、医師の指導のもとでの薬物治療が基本です。
・甲状腺ホルモン補充療法
不足している甲状腺ホルモンを薬で補うことで、代謝を正常化させ、体重減少を促進する効果が期待できます。
これはダイエット目的というよりも、病態そのものの改善が目的となります。
必要に応じて、食事・運動・薬の3本柱をバランスよく組み合わせ、医師や管理栄養士と相談しながら進めることが理想的です。
甲状腺機能低下症のダイエット
甲状腺機能低下症のダイエットは、医師のサポートが不可欠です。
専門医による適切な診断と治療
専門医は、甲状腺機能低下症の診断を行い、適切な治療を行います。
甲状腺機能低下症の治療には、甲状腺ホルモン補充療法が用いられます。
甲状腺ホルモンを補充することで、代謝を促進し、体重減量を促進することができます。
薬物療法による甲状腺ホルモン補充
甲状腺ホルモン補充療法では、甲状腺ホルモン剤を服用することで、不足している甲状腺ホルモンを補います。
甲状腺ホルモン剤は、医師の指示に従って服用しましょう。
自己判断で服用を中止したり、服用量を変更したりしないことが重要です。
生活習慣改善の指導
専門医は、食事療法や運動療法など、生活習慣改善の指導を行います。
医師の指示に従って、生活習慣を改善することで、ダイエット効果を高めることができます。
まとめ
甲状腺機能低下症は、代謝が低下するため、太りやすく痩せにくい病気です。
体重増加は、生活習慣病のリスクを高めるため、早期発見・早期治療が重要です。
もし、体重増加や疲れやすいなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、甲状腺機能の検査を受けましょう。
専門医の指導のもと、適切な治療と生活習慣改善を行うことで、健康的な体重を維持し、快適な生活を送ることができます。
よくあるご質問
Q:甲状腺機能低下症による体重増加はどのくらいでしょうか?
A:甲状腺機能低下症の患者は、代謝が低下するため体重が増加することがよくありますが、その増加量は個人差があります。
平均的には、数キログラム程度の増加が見られることがあります。
ただし、具体的な増加量は症状の重さやライフスタイルによって異なります。
Q:甲状腺機能低下症の効果的なダイエット方法は?
A:甲状腺機能低下症のダイエット方法には、医師から処方された甲状腺ホルモン薬を適切に服用しながら、栄養バランスの良い食事と定期的な運動を続けることが有効です。
加工食品を避け、新鮮な果物、野菜、全粒穀物、良質のタンパク質を摂取することが推奨されます。
Q:チラージンは甲状腺機能低下症における体重管理にどのように影響しますか?
A:チラージンは甲状腺ホルモン補充療法として用いられ、甲状腺機能を改善することで、代謝を正常化し、体重管理をサポートします。
ただし、チラージン単独での体重減少は期待できませんので、全体的なライフスタイルの見直しと医師の指導が不可欠です。
参考文献
甲状腺疾患と肥満症 小林 功
https://www.jasso.or.jp/data/message/message_1202.pdf
内分泌疾患に続発する肥満症
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/4/104_690/_pdf

