こんにちは。
医療法人社団日翔会 まえだクリニック院長 前田裕弘です。
今回は、2024年に発表した論文「ステロイド投与中の高脂血症の治療」について分かりやすく解説します。
ステロイドによる高脂血症の問題
ステロイドは強力な抗炎症作用や免疫抑制作用を持つため、膠原病、ネフローゼ症候群、白血病などの治療に広く用いられています。
しかし、長期的なステロイド使用は高脂血症を引き起こし、動脈硬化などの心血管リスクを高めることがわかっています。特に高脂血症は、未来の心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞など)発生のリスク因子となるため、ステロイド療法を受けている患者さんにとって深刻な問題です。
ペマフィブラートの作用メカニズム
ペマフィブラートは「選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)」で、脂質代謝をコントロールする役割を持っています。
従来のフィブラート系薬剤(フェノフィブラートなど)と比べ、より選択的にPPARαを活性化することで、脂質代謝を改善し、副作用を抑えることが期待されています。
この選択的活性化により、血中のトリグリセリド(TG)値を効果的に低下させるとともに、動脈硬化の予防に貢献します。
ケーススタディの詳細症例1:ギラン・バレー症候群の患者さんの経過
症例1:ギラン・バレー症候群の患者さんの経過
患者背景:40代男性、ギラン・バレー症候群と診断
治療開始:プレドニゾロン60mg/日を投与
経過:投与開始から2か月でTG値が急上昇、LDL-Cも上昇
ペマフィブラート導入後:2か月でTGおよびLDL-C値が正常範囲に戻る
考察:この患者さんでは、プレドニゾロンの影響で脂質異常が生じましたが、ペマフィブラートの導入によって迅速に改善しました。これにより、ステロイドを続けながらも脂質代謝をコントロールする効果が確認されました。
症例2:シェーグレン症候群の患者さんの経過
患者背景:60代女性、シェーグレン症候群と診断
治療開始:プレドニゾロン30mg/日を投与
経過:2か月でTGが上昇
ペマフィブラート導入後:4か月でTGが低下し始め、7か月後には正常値へ
考察:この患者さんでも、ステロイド治療に伴う高脂血症が見られましたが、ペマフィブラートによって徐々に改善し、持続的な効果が確認されました。
ステロイド誘発性高脂血症とペマフィブラートの治療効果
ステロイドによる脂質異常は、食欲増進や体脂肪の蓄積を通じて二次的に引き起こされる場合が多く、脂質代謝異常に至るメカニズムには様々な要因が関与しています。具体的には、ステロイドは肝臓でのVLDL(超低密度リポタンパク質)の合成を促進し、TGやLDL-Cの値を上昇させる作用があります。
ペマフィブラートの安全性
本研究で観察された症例では、ペマフィブラートの使用による有害事象は確認されませんでした。これは、他の治療法に比べても安全性が高いことを示唆しており、長期的なステロイド治療を受ける患者さんにとって重要な選択肢となります。
今後の展望
ステロイド治療による脂質異常は、長期的な心血管リスクを増加させる可能性があるため、早期に介入することが求められます。今回のケーススタディから、ペマフィブラートの導入により、脂質異常の改善が期待できることが示されました。ペマフィブラートを活用することで、今後もステロイド誘発性高脂血症の患者さんに対する効果的な治療法が提供できると考えています。
当クリニックは、堺市泉ヶ丘で地域のかかりつけ医として高脂血症の治療を行っています。
高脂血症にお悩みの方はどうぞお気軽にご相談ください。
論文掲載 媒体名
診療と新薬 61:15-18, 2024