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ストレスが原因で鉄欠乏性貧血になる?

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ストレスが原因で鉄欠乏性貧血になる?
「最近疲れやすい」「顔色が悪い」「息切れがする」の様な症状はありませんか?
もしかしたら、それは鉄欠乏性貧血のサインかもしれません。
近年ストレス社会と言われている中で、実はストレスが貧血の原因になることが知られています。
本記事では、ストレスと鉄欠乏性貧血の関係についてや原因、改善方法まで詳しく紹介します。

鉄欠乏性貧血の原因とは?

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足しておこる貧血の一種で、赤血球やヘモグロビンが不足して症状が現れます。
鉄欠乏性貧血の背景には、さまざまな原因があり、大きく分けて以下のような要素が挙げられます。

栄養不足

バランスの取れた食事ができていないと、体が必要とする鉄分やビタミンB12が不足しがちになります。
植物性食品中心の食生活では、動物性食品に比べて鉄の体内への吸収率が低くなるため鉄不足になりやすいです。
また、インスタント食品や外食、ダイエットによって栄養が偏ることでも、鉄が不足することがあります。
※植物性食品(穀物・野菜・豆・ナッツ・果実・キノコ・海藻などと、これらの加工食品。)
動物性食品(肉・魚・卵・乳などと、これらの加工食品。)

吸収不良

胃や腸の問題により、摂取した鉄が十分に吸収されないことがあります。
例えば、胃を部分的または完全に切除した際、鉄の吸収が大幅に低下することがあります。
また、消化器疾患である、セリアック病(小麦や大麦、ライ麦などに含まれるグルテンに対する自己免疫疾患)やクローン病(小腸や大腸などの消化管に慢性的な炎症や潰瘍を引き起こす病気)などの消化器疾患も、鉄の吸収を阻害します。
その他にも、胃酸は鉄の溶解と吸収を助ける働きがあるため、胃酸不足になってしまうと鉄の吸収効率が落ちます。
また、ストレスにより自律神経が乱れることから胃腸の働きが悪くなり、鉄分の吸収不良が起こることがあります。

慢性的な出血

ストレスにより胃潰瘍の発症や、月経過多、十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、癌、痔などによる慢性的な出血は、体内の鉄を消耗し、貧血の原因となります。

体内の鉄需要の増加

妊娠中や授乳中、幼児期や成長期など、体が通常以上の鉄を必要とするライフステージや状態では、鉄欠乏性貧血のリスクが高まります。

鉄分の利用不良慢性疾患

慢性腎臓病、慢性肝臓病、炎症性腸疾患など、様々な慢性疾患が原因で鉄分の利用が阻害されることがあります。
また、遺伝的な要因によって、鉄分の吸収や利用が阻害されることもあります。

ストレスと鉄欠乏性貧血の関連性

ストレスそのものが、直接的に鉄欠乏性貧血を引き起こすわけではありません。
しかし、ストレスが私たちの生活や健康に及ぼす影響は大きく、間接的に貧血の原因となることがあります。
ストレスは、自律神経のバランスを乱し、消化器系の機能を低下させ、鉄分の吸収を阻害することがあります。
また、ストレスホルモンであるコルチゾールは、鉄分の代謝にも影響を与え、貧血のリスクを高める可能性があります。
このように、直接貧血を引き起こすわけではないにせよ、その影響は無視できないと言えるでしょう。

ストレス性貧血の症状

医学的には正式な診断名ではありませんが、ストレスが原因の「ストレス性貧血は」どのような症状なのか、具体的に解説していきます。
また、以下の症状が見られる場合は貧血が疑われますが、ストレスが症状を複雑にしている可能性や、他の疾患の場合もあります。
いずれにしても、下記のような症状が続く場合には、医療機関での診察をお勧めします。

疲労感や倦怠感

常に疲れを感じ、体にだるさを覚えることが多くなります。

めまいや立ちくらみ

ストレスによる循環器系への影響を含むさまざまな要因が関与し、立ちくらみやふらつきが起こることがあります。

顔色が悪い

血行不良や酸素供給の低下によって、皮膚が青白く感じられることがあります。

動悸や息切れ

心拍が速くなる、あるいは不規則になることがあり、これがストレスと相まって息切れを引き起こします。

集中力の低下

ストレスによる精神的負担が加わり、さらに貧血の症状が集中力を低下させることがあります。

頭痛

酸素不足によって頭痛が頻繁に起こるようになります。

食欲不振

ストレスを感じると、食欲が減退し、鉄分を多く含む肉や魚、レバーなどの摂取量が減ってしまうことがあります。

消化不良

ストレスは胃腸の働きを弱め、鉄分の吸収率を低下させます。

自立神経の乱れ

ストレスは自律神経のバランスを崩し、鉄分の代謝を阻害する可能性があります。

睡眠不足

ストレスによって睡眠不足に陥ると、体内の鉄分がうまく利用されず、貧血のリスクが高まります。

その他

上記の症状以外にも、一般的な鉄欠乏性貧血の症状には以下があります。

  • ・爪の異常(薄くひび割れやすくなる、スプーンのように反り返った様な爪になる)
  • ・手足の冷え
  • ・口角炎、舌炎
  • ・頻尿
  • ・異食症(氷を食べたがるなど)

自分でできる鉄欠乏性貧血の対策と改善方法

鉄欠乏性貧血の対策と改善には、日常生活で取り入れやすい方法がいくつかあります。
ここからは、生活習慣の見直しと食事を中心とした改善法について詳しく解説します。

生活習慣の改善

生活習慣の改善では、以下の内容に注目して改善すると良いでしょう。

ストレスを解消する

ストレスは鉄分の吸収を阻害します。
ストレスをためないよう、リラクゼーションや趣味の時間を設け、ストレス緩和をしましょう。

睡眠時間を確保する

睡眠不足は鉄分の合成や吸収を阻害するため、質の高い睡眠を心がけましょう。
また、質の高い睡眠は、体の回復力を高める効果があります。

適度な運動をする

運動不足は血行不良を引き起こし、鉄分の吸収を阻害することがあります。
適度な運動をすることで、体内の血液循環を促進し、身体全体の健康を向上させる効果があります。
ウォーキングや軽いジョギングなどを日常に取り入れてみてください。

禁煙をする

タバコは鉄分の吸収を阻害するだけでなく、貧血を悪化させる可能性もあります。

食事生活の改善

食事療法では以下の点に注意して生活をすると良いでしょう。
もしも食事からの摂取が難しい場合、医師や薬剤師の指導を受けて鉄剤やビタミンのサプリメントを活用することも選択肢の一つです。
ただし、自己判断での摂取は避け、専門家の指導に従いましょう。

鉄分を多く含む食品を摂取する

肉、魚、卵、大豆製品、レバー、ひじき、小松菜、ほうれん草など、鉄分を多く含む食品を積極的に摂取しましょう。

ビタミンCを多く含む食品を摂取する

ビタミンCは鉄分の吸収を促進するため、柑橘類、イチゴ、ブロッコリー、パプリカなどを一緒に摂取しましょう。

タンパク質を摂取する

タンパク質は赤血球の材料となるため、肉、魚、卵、乳製品などをバランスよく摂取しましょう。

食物繊維を摂取する

食物繊維は鉄分の吸収を阻害するため、過剰な摂取は控えましょう。

カフェインを控える

コーヒーや紅茶に含まれる「タンニン」は鉄の吸収を妨げるため、飲みすぎないようにするか、鉄分と一緒にカフェインを摂取しないようにしましょう。

医療機関を受診することの重要性

しかしながら、これらの方法で症状が改善しない場合や、重度の貧血が疑われる場合は、医療機関での専門的な診察が必要です。
貧血が進行することで、日常生活にさまざまな支障がでることや、心筋梗塞、脳卒中のリスクが高まることがあります。
特に、血液専門医がいる病院では、より詳細な診断と適切な治療が可能ですので、体調に不安がある場合は早めの診察をおすすめします。

鉄欠乏性貧血の治療

ストレスが原因の鉄欠乏性貧血であっても、基本的には鉄欠乏性貧血と同様の治療を行うこととなります。
鉄欠乏性貧血の治療は、鉄の不足を補うことを主な目的とし、原因を特定してその根本的な問題に対処することも重要です。
ストレスが原因の場合には、ストレスを緩和させることも大切です。
以下に、鉄欠乏性貧血の一般的な治療法について詳しく説明します。

食事療法

食事からの鉄分の摂取を増やすことは、鉄欠乏性貧血の基本的な治療法の一つです。
鉄分の多い食品を意識して摂取することで、鉄の蓄えを増やします。
具体的な食品としては、赤身の肉、魚介類、レンズ豆やほうれん草などの植物性食品があります。
ただし、植物性食品に含まれる鉄は吸収率が低いため、ビタミンCを一緒に摂取することで吸収効率を高めることが推奨されます。

鉄剤の投与

食事だけで必要な鉄を補うことが難しい場合、鉄剤を使用することがあります。
鉄剤には経口剤と注射剤があり、以下のように使用されます。

経口鉄剤一般的には経口の鉄剤が処方され、数ヶ月にわたり継続的に摂取します。
副作用として、便秘や胃の不快感がある場合もありますが、医師の指導のもとで使用すると、効果的に貧血を改善できます。
注射による鉄剤経口鉄剤が不適合な場合や、消化器系の問題で吸収が不十分な場合には、注射による鉄の補給が行われることがあります。

まとめ

鉄欠乏性貧血は、日々の食事や生活習慣の見直しで改善を図ることができる場合がほとんどです。
しかし、自己判断による放置は避け、適切な診断と治療を受けることが最も重要です。
貧血と思われる症状を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
当クリニックでは、血液専門医である院長が一人ひとりの患者様に丁寧な診察を行い、個々の状態にあった治療を行います。
鉄欠乏性貧血に関する相談や診察を希望される方は、どうぞお気軽にお越しください。専門的な視点から、貧血のお悩みを解決へ導くお手伝いをいたします。

よくあるご質問

Q:鉄欠乏性貧血を放置するとどうなりますか?

A:貧血を放置していると、心臓や他の臓器に負担がかかり、心不全や心筋梗塞、脳卒中などの心血管系の障害や、免疫力低下による感染症のリスクが高まります。
また、妊娠中や授乳中の女性は胎児や乳児に影響を与える可能性もあります。
そのため、早期に発見し適切な治療を受けることが重要です。

Q:貧血になりやすい人の特徴はありますか?

A:女性や成長期の子ども、妊娠中や授乳中の方、偏った食生活や過度なダイエットをしている方は貧血になりやすいです。
その他にも慢性的な出血がある方、胃腸手術の既往のある方や消化器系の疾患により鉄の吸収が不十分な方は、貧血になりやすいです。

参考文献

MSD 家庭版 マニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/13-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%B2%A7%E8%A1%80/%E9%89%84%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E6%80%A7%E8%B2%A7%E8%A1%80
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/13-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%B2%A7%E8%A1%80/%E8%B2%A7%E8%A1%80%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

うつ誘発に対する鉄欠乏と慢性ストレスの相乗効果 行動生理学研究室 古屋里佳子
https://sport.fpark.tmu.ac.jp/personal/kita/data/abstract/17furu.pdf

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