
ふと体を触った時に「しこりがある」「腫れている」と感じたことはありますか?
悪性リンパ腫という血液のがんでは、主に首などのリンパ節に腫れやしこりを自覚することで発見されることが多い病気です。
がんの中でも根治しやすい病気のため、早期発見し治療を行うことが大切になります。
本記事では悪性リンパ腫の初期症状と早期発見の重要性について解説していきます。
悪性リンパ腫とは
悪性リンパ腫とは白血球の1つである「リンパ球」ががん化して増殖する、血液のがんです。
増殖した細胞はリンパ節など、体の様々な部位にしこりを作ることが特徴的です。
日本の成人の中では最も頻度が多いがんであり、女性よりも男性にやや多い病気と言われています。
悪性リンパ腫は、早期発見と早期治療を行うことで、根治できる可能性があります。
悪性リンパ腫の種類
悪性リンパ腫は100種類以上のタイプがありますが、大きく分けると「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に分けられます。
| 悪性リンパ腫 | ホジキンリンパ腫 | 古典的ホジキンリンパ腫 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 など |
| 非ホジキンリンパ腫 | 濾胞性リンパ腫(低悪性度リンパ腫) MALTリンパ腫(低悪性度リンパ腫) びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(中~高悪性度リンパ腫) 末梢性T細胞リンパ腫(高悪性度リンパ腫) など |
非ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫の中でも90%を占める割合となっており、進行の早さから大きく3つに分けられています。
- 低悪性度リンパ腫:年単位でゆっくり進行する
- 中〜高悪性度リンパ腫:月単位で進行する
- 高悪性度リンパ腫:週から日単位で急速に進行する
悪性リンパ腫の初期症状チェックリスト
以下は悪性リンパ腫の初期症状を確認するためのチェックリストです。
これらの症状のいくつかが当てはまる場合は、病院受診をおすすめします。
特に、症状が持続する、または悪化する場合は注意が必要です。
また、症状があるからといって、必ずしも悪性リンパ腫とは限らないため、体の不調を感じた際は医療機関を受診するようにしましょう。
🔍 悪性リンパ腫の初期症状セルフチェック
- リンパ節の腫れ
□ 首、脇の下、足の付け根(鼠径部)などのリンパ節が腫れている。
□ 腫れが無痛で柔らかい、または硬くなっている。
□ 腫れが長期間(2週間以上)持続している。 - 発熱
□ 原因不明の微熱が続いている。
□ 熱が下がってもすぐに再発する。 - 倦怠感
□ 日常生活に影響が出る程体が疲れやすい。
□ 十分に休息を取っても疲労感が改善しない。 - 夜間の寝汗
□ 夜間に大量の汗をかき、寝具や衣服を取り替える必要がある。
□ 他の病気(風邪やインフルエンザ)の兆候がない状態で寝汗が続く。 - 体重減少
□ 数か月で10%以上の体重が減少している。
□ 特にダイエットや運動をしていないのに体重が減っている。 - 出血やあざができやすい
□ 軽い衝撃で大きなあざができる。
□ 鼻血や歯茎からの出血が頻繁に起こる。 - かゆみ
□ 全身または特定の部位で原因不明のかゆみがある。
□ 皮膚異常(発疹や湿疹)がないのにかゆみを感じる。 - 胸部の違和感や咳
□ 胸の圧迫感や息苦しさを感じる。
□ 咳症状の症状がなく、持続的な咳がある。 - 左上腹部の違和感
□ 脾臓の腫れによる圧迫感や痛みを感じる。
□ お腹の張り、少量でもお腹が満腹に感じる。 - 感染症にかかりやすい
□ 軽い風邪や感染症が治りにくい。
□ 繰り返し感染症を繰り返す。 - その他の症状
□ 食欲不振が続いている。
□ 頭痛や集中力の低下がある。
□ 脚のむくみやしびれを感じる。
悪性リンパ腫の初期症状
悪性リンパ腫は初期症状が軽微で、他の疾患と混同されやすい特徴があります。
早期発見することで治療の選択肢が広がり、予後の改善が期待されるため、初期症状を理解し、定期的に健康診断を受けることが大切です。
具体的な初期症状について解説していきます。
<h3>首などのリンパ節の腫れ
悪性リンパ腫の特徴として、リンパ節の腫れがあります。
特に、首、脇の下、足の付け根(鼠径部)などのリンパ節の腫れを自覚することが
多いです。
腫れは痛みを伴わないことが多く、ゴムのような感触です。
触っても硬すぎず柔らかすぎないことが特徴であり、赤みや発疹が現れることもあります。
風邪や感染症によるリンパ節の腫れは、症状が改善するとともにリンパ節の腫れもなくなりますが、数週間以上腫れが継続する場合には要注意です。
<h3>原因不明の発熱や微熱
悪性リンパ腫では、37℃台の微熱や38℃以上の発熱が周期的に起こることがあります。
発熱の原因としては、免疫細胞ががん細胞を攻撃する際に炎症が起こることや、体内の異常な免疫反応や感染症により発熱を引き起こします。
倦怠感や異常な疲労感
十分な休息を取っても改善しないような疲労感や倦怠感を感じることがあります。
一般的な疲労感や倦怠感とは異なり、日常生活に支障をきたす程の状態となります。
リンパ節は免疫機能を調整する場所のため、リンパ節が腫れることにより、体の免疫機能がうまく働かないことから起こります。
夜間の寝汗
夜間に寝具やパジャマを取り替える必要がある程の寝汗をかくことがあります。
リンパ球ががん化して増殖することにより、炎症を引き起こす物質が作られることから、起こります。
体重減少
食事量や運動量に変化がなく、数ヶ月で急激に体重が減少(10%以上の低下)することがあります。
また、食欲が低下し、食事摂取量が少なくなることもあります。
これらは体内での異常な細胞増殖のため、よりエネルギーを使うことで起こります。
皮膚のかゆみ
皮膚に発疹や発赤がない場合でも、全身にかゆみを感じることがあります。
全身にかゆみが生じる原因は、リンパ腫細胞と戦う免疫系が放出する化学物質が皮膚の神経を刺激するために起こります。
また、リンパ腫のタイプによっては、かゆみを伴う皮疹が現れることもあります。
息切れや咳
リンパ節の腫れの部位が胸部である場合、気道が圧迫されることにより、息切れや慢性的な咳が出ることがあります。
呼吸器系の症状と混同しやすいため、他の症状と併せて注意が必要です。
腹部の違和感や膨満感
お腹の中でリンパ節の腫れがある場合は、腹部の膨満感を感じることがあります。
消化不良や食事量が少ない時でも、満腹感やお腹が張っている感覚が見られます。
出血やあざができやすい
悪性リンパ腫により異常なβ細胞が増殖すると、赤血球や血小板の産生が妨げられることにより、少しの打撲でもあざができやすくなります。
また、鼻血や歯茎からの出血が増える場合もあります。
悪性リンパ腫のステージ
悪性リンパ腫には、がんの進行具合が分かる指標が設けられています。
悪性リンパ腫のステージは以下の通りです。
| 病期 | 病気の範囲 | 特徴 |
|---|---|---|
| 限局期 | I期 ・リンパ系の1つの領域のみで病変が確認される。 ・または、リンパ系以外の1つの臓器(限局病変)に限られる。 | 初期段階であり、病気の進行が限られている。 治療による完治の可能性が高い。 |
| II期 ・横隔膜の片側(上側または下側)にある2つ以上のリンパ系の領域に病変が確認される。 ・または、リンパ系の領域に加え、1つのリンパ節外の臓器または組織に広がっている場合も含む。 | 局所的だが複数の部位に拡大している。 早期治療で良好な経過が期待できる。 | |
| II期 bulky | ・Bulky病変を伴うII期。 ・Bulky病変とは、腫瘍のサイズが10cm以上の大きい場合や、胸部X線で胸部縦隔の3分の1以上を占める腫瘤を指す。 (大きさはリンパ腫の種類によって異なる場合あり) | Bulky病変があると、完全寛解に達するまでの治療は難易度が高くなる。 強力な化学療法や放射線療法を併用し、高い治療効果が期待されるケースも多い。 |
| 進行期 III期 | ・横隔膜をまたいで、リンパ系の複数の領域に病変が広がっている。 ・または、リンパ系以外の臓器や組織にも病変が見られる場合。 | 病気が進行し、広範囲に病変が広がっている。 治療は通常、化学療法と放射線療法の併用が必要。 |
| IV期 | ・リンパ系以外の複数の臓器(骨髄、肝臓、肺など)に病変が広がっている。 ・病変がリンパ系を超えて体内全体に影響を与える。 | 最も進行した段階であり、治療が長期化する。 治療は通常、全身療法(化学療法や免疫療法)が主体となる。 |
悪性リンパ腫の余命
悪性リンパ腫の余命は、病気の種類や進行度、患者の年齢や健康状態、治療法などの様々な要因に大きく影響されるため、一般的な統計から解説します。
ホジキンリンパ腫の余命
ステージI〜II:早期治療により治癒する可能性が高いです。
5年生存率は90%以上と言われています。
ステージIII〜IV:治療は複雑になりますが、多くの場合治療後に長期的な生存が期待できます。
非ホジキンリンパ腫の余命
ステージI〜II:5年生存率は80%以上と言われています。
ステージIII〜IV:治療の効果により50〜70%程度の生存率が見込まれています。
悪性リンパ腫の検査方法
悪性リンパ腫の診断に最も重要な検査として、リンパ節生検や腫瘍生検があります。
その他では、全身状態や病気の進行度の確認のために血液検査や画像診断、骨髄検査などが行われます。
血液検査
白血球や赤血球、血小板、CRP(炎症反応)などの数値や肝臓や腎臓の機能について調べます。
特に、LDH(乳酸脱水素酵素)という、腫瘍の活動性を示す指標が高くなることが多いです。
また、非ホジキンリンパ腫では腫瘍マーカーが参考にされることもあります。
画像診断
腫瘍の位置や全身への進行度を判断するために行います。
胸部レントゲン(X線撮影)やCT、MRI、PET-CTなどが用いられます。
リンパ節生検、腫瘍生検
腫れたリンパ節の一部を切除し、病理検査を行います。
これにより、リンパ腫の種類や病理的特徴を調べます。
骨髄検査
病気の進行度や治療方針を決める目的で行います。
骨髄液の採取や骨髄生検を行い、骨髄ががん細胞に侵されているかを確認します。
ここで骨髄にがん細胞がある場合は、ステージIVと診断されます。
悪性リンパ腫の治療法
悪性リンパ腫の治療には、抗がん剤による化学療法と放射線治療が主となりますが、患者さんの全身状態や病気の進行度、種類によって治療方法を決定します。
状態によっては、造血幹細胞移植(正常な造血幹細胞を移植する治療法)や手術により腫瘍を摘出することもあります。
薬物療法
悪性リンパ腫の治療では、抗がん剤や分子標的薬を組み合わせる「多剤併用治療法」が主となります。
| ホジキンリンパ腫 | |
|---|---|
| ABVD療法 | 4種類の抗がん剤(ダカルバジン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、ドキソルビシン)を組み合わせて行う治療法。 |
| A-AVD療法 | ブレオマイシンの代わりに抗体薬物複合体のブレンツキシマブ ベドチンを併用する治療法。 |
これらは初回治療で、一般的には外来通院で行われます。
ステージによってはBEACOPP療法など、強力な化学療法を行う場合もあります。
| 非ホジキンリンパ腫 | |
|---|---|
| CHOP療法 | 3種類の抗がん剤(シクロフォスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン)とステロイド(プレドニゾロン)の併用療法。 |
| R-CHOP療法 | CHOP療法に抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブを併用する治療法。 |
| BR療法 | ベンダムスチンとリツキシマブを併用する治療法。 |
放射線治療法
放射線をがん細胞に照射して破壊する治療法です。
ホジキンリンパ腫の早期(ステージI・II)で薬物療法と併用されることや、進行が遅いタイプの悪性リンパ腫で、病変が狭い範囲に限られている場合には、放射線単独で治療ができる場合があります。
治療以外にも、一時的に症状を緩和し、苦痛を和らげるために行うこともあります。
造血幹細胞移植
造血幹細胞を移植することで、正常な血液細胞を再生させる治療法です。
以下の治療法があります。
・自家移植:自分の造血幹細胞を事前に採取し、高用量化学療法後に移植する方法。
・同種移植:ドナーから提供された造血幹細胞を移植する方法。
手術療法
悪性リンパ腫の場合は基本的に手術は行いませんが、腫瘍がリンパ節以外の臓器にある場合には、手術を行い摘出することがあります。
免疫療法
免疫系を活性化させて、がん細胞を攻撃する治療法です。
・リツキシマブ(抗CD20抗体)
CD20という分子を標的にがん細胞を破壊するために、B細胞性リンパ腫(濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など)に使用します。
・CAR-T細胞療法
患者自身のT細胞を遺伝子操作し、がん細胞を攻撃する能力を持たせる方法です。
特に再発・難治性のB細胞性リンパ腫に効果があります。
まとめ
悪性リンパ腫の初期症状は、日常的な体調不良と見分けがつきにくいものが多いですが、注意深く観察することで早期発見が可能です。
特にリンパ節の腫れや寝汗、体重減少などが続く場合は、病院受診をすることが大切です。
また、悪性リンパ腫でなくとも他の病気の可能性もありますので、体調不良を感じたら早めに病院にかかるようにしましょう。
体調で不安な方は些細なことでも構いませんので、当クリニックまでお気軽にご相談下さい。
よくあるご質問
Q:悪性リンパ腫は完治する病気ですか?
A:悪性リンパ腫は早期発見と早期治療により完治する可能性が高い病気です。
完治をしなくても、病気と共存しながら生活の質を保つことができるケースもあります。
Q:悪性リンパ腫は再発しますか?
A:悪性リンパ腫の再発率は、がんの種類によって異なります。
例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、約4割の方が再発し、治療が必要になると言われています。
患者さんそれぞれの全身状態や、がんの種類により予後が異なるため、担当医師から詳細な情報を得ることが重要です。
また、再発予防や早期発見目的で、血液検査、画像検査などによる定期的なフォローアップも重要です。
参考文献
一般社団法人日本血液学会
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html
がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/index.html

