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論文紹介「チロシンキナーゼ阻害薬治療における薬剤アドヒアランスの重要性」

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こんにちは。
医療法人社団日翔会 まえだクリニック院長 前田裕弘です。

今回は、2019年に発表した論文「チロシンキナーゼ阻害薬治療における薬剤アドヒアランスの重要性」について分かりやすく解説します。
慢性骨髄性白血病(CML)は9番と22番染色体の転座により生じる疾患で、成人患者の治療において、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の発展により、治療成績が飛躍的に向上しました。
しかし、TKI治療には副作用(ADE)が伴い、薬剤アドヒアランス(服薬遵守)や患者の生活の質(QoL)に悪影響を及ぼすことが指摘されています。

本研究では、特にイマチニブ(IM)からニロチニブ(NILO)に切り替えた場合のアドヒアランス改善と臨床転帰について検証しました。

薬剤アドヒアランスの重要性

TKI治療において、薬剤アドヒアランスは分子レベルの完全寛解を得るために重要な要素とされています。
特に、IMからNILOへの切り替えによってアドヒアランスが向上し、生活の質が改善する可能性が示唆されています。
薬剤アドヒアランスはMorisky Medication Adherence Scale(MMAS)で評価され、高いアドヒアランスが良好な治療結果に関連することが確認されました。

研究方法

大阪南医療センターで6ヶ月以上TKI治療を受けている20名のCML患者を対象に、IMからNILOへの切り替え後のアドヒアランスやQoLの変化を調査しました。
患者は、14種類のADEに関する質問票に回答し、症状の重症度が測定されました。また、MMASを用いてアドヒアランスを評価し、臨床転帰(ISスコア)との関連性も分析しました。

結果

ADEの比較

IMからNILOに切り替えた後、全体的なADEの発生が減少し、多くの患者で浮腫や消化器症状、筋肉痛などの症状が改善しました(図3、図4参照)。

生活の質の改善

NILOへの切り替え後、QoLスコアが大幅に向上しました(図5参照)。これはADEの減少がQoLに良い影響を及ぼしたことを示しています。

アドヒアランスと臨床転帰の関係

NILO群ではMMASスコアとISスコアとの間に強い関連が見られ、アドヒアランスが高いほど良好な臨床転帰が得られることが分かりました(図6参照)。

考察

本研究の結果、TKI治療中のADEがアドヒアランスや治療結果に強い影響を与えることが確認されました。ADE管理がアドヒアランス向上の鍵であり、CML患者の治療成績改善に寄与することが示唆されました。NILOへの切り替えはADEの軽減とQoLの向上に効果的であり、高いアドヒアランスを維持するための有効な選択肢と言えます。

結論

ADE管理と薬剤アドヒアランスの維持は、CML患者の治療における重要な要素です。本研究の結果から、NILOへの切り替えがQoLやアドヒアランスの改善に貢献し、より良い治療成績をもたらすことが確認されました。

論文掲載媒体
この研究はMDPIの「Reports」誌に掲載されました。
原著論文 診療と新薬 2024; 61: 15-18
URL:https://www.shinryo-to-shinyaku.com/db/pdf/sin_0061_01_0015.pdf

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