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高血圧の治療方法とは

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血圧とは、心臓から送り出された血液が血管壁に与える圧力のことです。
心臓が収縮して全身に血液を送り出した時に血圧は最も大きくなり、このときの血圧を「収縮期血圧(最高血圧)」といいます。逆に、心臓が拡張して全身から血液が戻ってくる時の血圧は最も小さくなり、このときの血圧を「拡張期血圧(最小血圧)」といいます。
収縮期血圧/拡張期血圧の値が、診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上で高血圧と診断されます。高血圧は、脳心血管疾患(脳卒中および心疾患)の最大の危険因子で、日本において高血圧に起因する脳心血管病で亡くなる方の数は10万人と推定されています。
 
今回の記事では、高血圧の治療方法について解説します。
 

高血圧の治療

高血圧治療の目的は、高血圧の持続によってもたらされる脳心血管病の発症・進展・再発を抑制するとともに、それらによる死亡を減少させること、また、高血圧者がより健康で高いQOLを保った日常生活ができるように支援することにあります。
 

高血圧の診断基準

特定日営利活動法人日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」において、高血圧の診断基準は以下の通り設定されています。
 

成人における血圧値の分類

分類診察室血圧家庭血圧
収縮期血圧拡張期血圧収縮期血圧拡張期血圧
正常血圧<120かつ<80<115かつ<75
正常高値血圧120-129かつ<80115-124かつ<75
高値血圧130-139かつ/または80-89125-134かつ/または75-84
Ⅰ度高血圧140-159かつ/または90-99135-144かつ/または85-89
Ⅱ度高血圧160-179かつ/または100-109145-159かつ/または90-99
Ⅲ度高血圧圧≧180かつ/または≧110≧160かつ/または≧100
(孤立性)
収縮期高血圧
≧140かつ<90≧135かつ<85

 
 

降圧治療について

降圧治療(血圧を下げる治療)は、非薬物療法と薬物療法に大別されます。
非薬物療法には、生活習慣の修正(減塩を中心とした食事療法、運動療法、アルコール制限、肥満の改善)と、高血圧を引起す原疾患の治療(睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP療法、二次性高血圧症に対する腎動脈形成術等)が含まれます。このうち生活習慣の修正は、優位な降圧効果があるため、高血圧者に限らず、すべての人に推奨されます。
脳心血管疾患のリスクが低い場合は、生活習慣の修正を中心に指導を行い、リスクが高い場合には薬物療法を考慮します。
 

生活習慣の修正

生活習慣の修正は、降圧効果が期待されるだけでなく、高血圧予防の観点からも非常に重要です。既に薬物療法を開始している患者さんにおいても、生活習慣の修正によって降圧作用が増強し、投与量の減量につながることが期待できるため、生活習慣の修正はすべての高血圧患者さんに対して有効な治療方法です。
生活習慣の修正項目は以下の通りで、それぞれの項目ごとに単独で得られる降圧効果は必ずしも大きくはないものの、複数項目の複合的な修正はより効果的です。

生活習慣の修正項目

  • ① 食塩制限6g/日未満
  • ② 野菜・果物の積極的摂取(※)
  • ③ 適性体重の維持:BMI(体重[kg]÷身長[m]2)25未満
  • ④ 運動療法:軽強度の有酸素運動を毎日30分以上または1週間のうち180分以上
  • ⑤ 節酒:エタノールとして男性20~30mL/日以下、女性10~20mL/日以下に制限
  • ⑥ 禁煙

※カリウム制限が必要な腎障害患者さんでは推奨しない。
 肥満や糖尿病などエネルギー制限が必要な患者さんにおける果物摂取は80kcal/日にとどめる。
 
 

薬物療法

生活習慣の修正は高血圧予防および降圧効果を期待できるものの、血圧値が高くなるほど生活習慣の改善のみでは目標とする降圧効果を得られない患者さんも多く、薬物療法による治療が必要となります。
現在使用されている主要な降圧薬には、Ca拮抗薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、利尿薬(サイアザイド系、ループ利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、β遮断薬の5種類があります。降圧薬の投与に際しては、以下の手順で患者さんごとに適応する薬剤を選択します。
 

  • ① 1日1回投与の薬剤を優先
  • ② 20/10mmHg以上の降圧を目指す場合には初期から併用療法を考慮
  • ③ 副作用をきたすことなく降圧効果を高めるために適切な組み合わせで併用
  • ④ 忍容性が悪い(※)場合は、作用機序が異なる他の降圧薬に変更
  • ⑤ 合併する疾患や病態により積極的に適応を考慮
  • ⑥ 禁忌、慎重投与、降圧薬以外の併用薬との相互作用に注意

※投与した降圧薬の降圧効果がほとんどない、副作用が服薬継続の妨げになる等。
 
 

まとめ

この記事では、高血圧の治療方法について解説しました。当クリニックの外来診療では内科・血液内科を中心とした診療を行っており、既に脂質異常症で治療中の患者さんの診療はもちろん、健康診断や人間ドックで「再検査」「精密検査」の通知を受けた後のご相談も承っております。
お身体に不調や不安がありましたら、どんな症状でもお気軽にご来院ください。
 

参考文献

特定非営利活動法人日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019年版
・臨床検査データブック 2021-2022,発行 2021年1月15日第1刷,監修髙久史麿,
 発行者株式会社医学書院

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