血液内科

白血球系疾患について

Leukocyte disease

白血球とは

血球の中で、主に免疫を担当する細胞群のことを白血球と呼びます。
細菌などの異物がからだに侵入すると白血球数が増加し、異物を細胞内に取り込み無害化します。すなわち、細菌などの感染症に罹患すると血液中の白血球数が増加します。
白血球は分類すると、形の違いから「好中球」、「リンパ球」、「単球」、「好酸球」、「好塩基球」の5種類があります。その内、「好中球」、「好酸球」、「好塩基球」は顆粒球に分類されます。顆粒球とは、白血球のうち骨髄系の細胞の一つであり、細胞質内に豊富な顆粒(殺菌作用のある成分)を有することを特徴とします。

好中球(こうちゅうきゅう)

好中球は、白血球の中の顆粒球の一種であり、白血球全体の約45~75%を占めます。体内に侵入した細菌や真菌感染からからだを守る主要な防御機構となっております。好中球は、強い貪食能力(体内の不必要なものを取り込み、消化し、分解する能力)を持っています。

リンパ球

リンパ球は、免疫反応に中心的に関与する白血球です。免疫とは、細菌、ウイルス、寄生虫などの病原微生物以外にも異物、他人の細胞、体内でがん化した細胞など「自分以外のもの」を識別して排除する仕組みです。リンパ球にはT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞などの種類があり、これらの細胞は、連携してウイルスなどの病原体やがん細胞などの異物を攻撃します。

好酸球

好酸球は、白血球の中の顆粒球の一種であり、アレルギー(喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など)や寄生虫に関与する白血球です。好酸球は、正常な人では白血球の約0.5~1%を占めていますが、アレルギー症状のある人ではこの割合が3~5%になることが多く、寄生虫に感染した人ではさらに高くなることもあります。

好塩基球

好塩基球は、白血球の中の顆粒球の一種であり、白血球全体の1%未満を占めます。アレルギーが起こる際に働いている免疫細胞です。免疫細胞の中では数が少ないため研究途上です。

単球

単球は、好中球より大型の白血球です。白血球全体の3~8%を占めます。好中球と同じように細菌などを処理する以外にも、マクロファージと呼ばれるより大型の細胞に成長(分化)して、リンパ球による免疫反応を補助したり、傷んだ細胞や老廃物を処理するなどの特殊な働きを担います。

白血球数の異常

白血球は免疫を担当する細胞群です。病原体など、体に侵入してくる異物を取り込んで消化する特徴があり、白血球数の増加があると、体のどこかに病原体が侵入しているのではないか、炎症が起きているのではないかという推測ができます。
健康診断や人間ドックで、白血球が増加している、もしくは減少しているという結果が出ることは珍しいことではありません。
白血球数の基準範囲は3,100-8,400/μLと広く、個人差によるばらつきが大きいです。基準範囲の設定は、多くの健康者の方から求めるために幅広い範囲となっております。
白血球は1種類の細胞のみではなく、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球等、いろいろな分画の細胞が含まれていますので、白血球の増減を評価する場合は、その分画に分けて考える必要があります。

白血球数の基準範囲
白血球数判定など
3,100-8,400異常なし
8,500-8,900軽度異常
9,000-9,900要再検査・生活改善
3,000以下、10,000以上要精密検査・治療

白血球数単位: /μL(マイクロリットル)

白血球増加症

白血球増加症とは、白血球が基準値以上に増加する状態です。
ですが、基準値は年齢、採血法、測定法などにより異なります。成人では一般に10,000/μL以上を白血球増加症定義されます。小児はこの数値より多い数値となります。白血球全体の数値の他に、どの白血球分画が増加しているかを知ることが重要となります。
最も多い白血球分画としてあげられるのは、好中球の増加です。細菌感染症やストレスが原因のことが多いですが、がん、心筋梗塞、事故などによる外傷なども原因となりえます。
また、白血病など、白血球が異常に増加する血液のがんもあります。

好中球増加症

通常、好中球数が7,000/μL以上の場合「好中球増加症」とされます。この場合の好中球は主として成熟型(桿状核球と分葉核球)を指し、未熟型ことに骨髄芽球や前骨髄球の増加が主体を占める急性骨髄性白血病などはこの中に含めません。

好中球増加症の原因
  • 細菌感染症:敗血症、肺炎、虫垂炎など
  • 感染症以外の炎症:リウマチ熱など
  • 悪性腫瘍
  • 血液疾患:慢性骨髄増殖性疾患(慢性骨髄性白血症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄線維症)
  • 薬物投与後:副腎皮質ステロイド、アドレナリン

好酸球増加症

通常、好酸球数が500/μL以上の場合「好酸球増加症」と定義します。
一般に気管支喘息などのアレルギー疾患でみられます。アレルギー性の炎症部位において好酸球の動員および活性化で重要な働きをする造血サイトカイン(IL5など)が増加するためと考えられています。
寄生虫感染、皮膚病、膠原病などでも好酸球増加を示すことがありますが、これらの場合でも一種のアレルギー反応が起こっているものと考えられています。原因不明の高度の好酸球増加(>1,500/μL)が6カ月以上続く場合は好酸球増加症候群と呼ばれています。

好塩基球増加症

慢性骨髄性白血病などの慢性骨髄増殖性疾患で、しばしば好塩基球増加が認められます。
その他の病気では、アレルギー疾患や甲状腺機能低下(粘液水腫など)などで軽度に増加することがあります。

単球増加症

単球数の上限については確定的な値はなく、500/μL以上から950/μL以上まで種々の値が使われています。単球増加症を示す感染症としては「結核」「亜急性心内膜炎」がよく知られています。
無顆粒球症の回復期や種々の好中球減少症で、相対的にも絶対的にも増加することがあります。
単球の腫瘍である「急性単球性白血病」では、白血病化した異常な単球が著増します。慢性骨髄単球性白血病は未梢血の単球が1,0000/μL以上と定義されており、骨髄異形成症候群の一型に含められています。

リンパ球増加症

成人では、リンパ球数が4,000/μL以上の場合「リンパ球増加症」としております。
感染症の内、ウイルス性のものではリンパ球増加症を示すことがしばしばみられ、この場合、正常のリンパ球とは形態の異なる異型リンパ球のみられることが多く、ことに伝染性単核球症で多数認められます。
細菌性では、百日咳や結核でみられることがあります。慢性リンパ性白血病では腫瘍性のリンパ球が増加します。

骨髄線維症

骨髄線維症とは、造血細胞に代わって線維組織が骨髄中に増える病気で、異常な形状の赤血球が生産されたり、貧血や脾臓の腫大が発生したりします。
悪性骨髄線維症(ときに急性骨髄線維症とも呼ばれます)は、まれな種類の骨髄線維症で、赤血球、白血球、血小板の濃度がすべて低下します。骨髄の中で特定の未熟な白血球(芽球)の数が増加します。悪性骨髄線維症は、 急性白血病の一種と考えられています。

伝染性単核球症

ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)などに初めて感染することが原因で起こる、発熱やリンパ節の腫れなどの症状を起こす急性感染症です。EBウイルスは唾液に潜んでおり、回し飲みやキスが原因でうつることが多いため、別名キス病と呼ばれます。多くの人は思春期までに親や周囲の人から感染しているので、EBウイルスに対する免疫力(抗体)を持っています。子どもの頃に感染しても症状はほとんど出ませんが、思春期以降になってから初感染すると高熱などの症状が出やすい特徴があります。扁桃炎に症状が似ているため、間違えて診断されることもあります。

白血球減少症

白血球減少症は、白血球数が基準値以下に減少した状態の総称です。その境界線は3,000/μL以下が一般的とされています。
白血球増加症の場合と同様に、白血球全体の数よりは、どの白血球分画の絶対数が減少しているかが問題となります。最も多いのは好中球の減少で、細菌等に感染しやすくなるため臨床的にも重要です。

好中球減少症

好中球の絶対数が減少する病気で、1,500/μL以下の場合「好中球減少症」とされます。好中球が減少するという事は、身体の免疫機能が低下する事です。その原因にかかわらず感染症にかかりやすくなります。

好中球減少症の原因
  • 感染症:ウイルス性(麻疹・風疹・エイズなど)、細菌性(腸チフスなど)があります
  • 血液疾患:無顆粒球症、造血器腫瘍(急性白血病・多発性骨髄腫など)、貧血(再生不良性貧血・発作性夜間血色素尿症・巨赤芽球性貧血など)
  • 脾機能亢進症:肝硬変、特発性門脈圧亢進症など
  • 血液疾患:慢性骨髄増殖性疾患(慢性骨髄性白血症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄線維症)
  • 免疫性:全身性エリテマトーデス、自己免疫性好中球減少症など
  • その他:周期性好中球減少症、慢性特発性好中球減少症

好酸球減少症

急性感染症の中で、特に腸チフスの初期には好酸球がほとんど消失するのが特徴とされています。クッシング症候群、副腎皮質ステロイド投与後およびストレス時にも減少します。

リンパ球減少症

リンパ球の絶対数が1,000/μL以下の場合、「リンパ球減少症」とされます。
悪性リンパ腫などの悪性腫瘍、エイズなどの免疫不全症、また副腎皮質ステロイドや 各種の抗癌剤投与時などにリンパ球減少症をきたします。免疫反応を担うリンパ球が減少することにより、免疫不全となり感染症にかかりやすくなります。

汎血球減少症

赤血球、白血球および血小板の3系統の血球が同時に減少する疾患を「減少汎血球減少症」といいます。汎血球減少症を示す主な病気については、その成因別に以下の表に示してあります。

汎血球減少症の主な成因
血球産生不全によるもの・再生不良性貧血:特発性、薬剤性(抗癌剤など)
・骨髄内での腫瘍細胞の増殖:がんの骨髄転移、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、急性白血病の一部 (非白血性白血病)など
・ビタミンや葉酸の欠乏:巨赤芽球性貧血
血球崩壊または貯留の亢進によるもの脾機能亢進症:特発性門脈圧亢進症、肝硬変など
発作性夜間血色素尿症
全身性エリテマトーデス

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