血液内科

赤血球系疾患について

Erythrocyte disease

赤血球とは

赤血球とは、細胞成分の約96%を占める血球成分です。赤い色をしており、血液が赤い色なのはこの為です。
赤血球の血球成分の数は血液1μL中、男子で約500万個、女子で約450万個あり、そこに含まれるヘモグロビンが、からだの各組織に酸素を送り届けるとともに、各組織でできた炭酸ガスを肺に持ち帰る働きをします。
体内では1秒間に約100~200万個つくられ、1日に2000億個の赤血球がつくられています。その赤血球がつくられる仕組みに異常が起こった場合、赤血球が少なすぎると「貧血」となり、運搬している酸素の減少によって脳、筋肉、心臓などの全身に酸素欠乏の症状が起こります。脳の酸素欠乏でめまい、頭痛が起こり、筋肉の酸素欠乏で身体がだるくなったり、疲れやすくなったりします。心臓の酸素欠乏により狭心症様の胸痛が起こることもあります。
逆に赤血球が多すぎると「多血症」となり、血栓症などの危険性が高まります。血液内の赤血球が多くなると粘稠度が増し、顔面の紅潮やめまい、頭痛などの症状が出ることや、皮膚のかゆみや手足が熱くてヒリヒリする感覚が出ることがあります。また脾臓が腫れることが多く、腹部の膨満感を感じることもあります。
この為、体内では赤血球を適切な数に調整する事がとても大切です。

赤血球数

血液1μL(=1m㎥)の中に含まれる赤血球の数です。

ヘモグロビン値

赤血球の中に含まれている鉄と結合したたんぱく質(ヘム蛋白)で呼吸で取り入れた酸素を臓器に運ぶ役目を担います。貧血の重要な指標です。

ヘマトクリット値

血液の中で赤血球が占める比率を表します。貧血や多血症の評価に使われます。

貧血

貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが少なくなった状態です。ヘモグロビンは呼吸で取り入れた酸素を臓器に運ぶ役目を担います。その為、ヘモグロビンの量が低下するとカラダの組織に十分酸素が行き渡らず、めまい、立ち眩み、動機、息切れ、頭痛、倦怠感など、様々な不調が表れます。
検査の数値では、一般に男性ではヘモグロビン値 13.0g/dL以上、女性では 12.0g/dL以上が貧血と定義されます。

貧血の症状

貧血の状態が軽度だと症状が自覚できないことも多いですが、主な症状としては以下のようなものがあります。

貧血の主な症状
  • 疲れやすくなる
  • 全身の倦怠感がある
  • めまいや立ち眩みがする
  • すぐ息が切れる
  • 肩こり
  • 眠気がつよい
  • 顔色が悪くなった
  • 動悸が治まらない
  • 頭痛がする
  • 耳鳴り
  • 食欲不振や悪心
  • 性機能低下

貧血の原因

貧⾎は、赤血球のもとである「鉄分」の不足によるものというイメージが強いかもしれませんが、赤血球・ヘモグロビンが作られない場合、なくなってしまう場合など、実はさまざまな原因があります。

栄養素の不足

赤血球・ヘモグロビンを作るのに必要な栄養素(鉄、亜鉛、葉酸、ビタミンB12)が不足している。

骨髄の病気

骨髄で赤血球が正常に作られなくなる。

腎臓の病気

骨髄に血液を作らせるサインである「造血ホルモン」が尋常で正常に作られなくなる。

大量の出血、出血の持続

頻発月経、過多月経などの月経異常や、胃・十二指腸潰瘍やがんなどによる出血により、赤血球・ヘモグロビンが不足する。

赤血球の破壊(溶血性貧血)

細菌感染、免疫の異常、激しい運動などで赤血球が破壊される。

貧血の種類

鉄欠乏性貧血

最もよく見られるタイプの貧血で多くは女性の月経過多や子宮筋腫などによるものです。
一方、男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血を指摘された場合には、がんや潰瘍などによる胃や腸からの出血がないか調べる必要があります。

腎性貧血

腎不全によって透析中の方に多く見られます。エリスロポエチンの注射などで治療可能です。

その他の原因による貧血

慢性疾患に伴う貧血、溶血性貧血、白血病など、様々な原因で貧血をきたします。

貧血の治療

貧血の治療は、一般的に最もよく見られる「鉄欠乏性貧血」には鉄剤での治療、不足した栄養のビタミン剤などの補助が中心となります。
大切なのは貧血の原因が、単純な栄養の摂取不足なのか?他の病気が原因の可能性がないか?という専門的な判断です。当クリニックでは、血液内科専門クリニックとして、患者さま一人ひとりの症状にしっかりと向き合い、最適な治療を提供させていただきます。

多血症

多血症とは、貧血とは逆に血が多い状態で、血液中のヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値ないし赤血球数が増加し、基準値よりも多くなる疾患を多血症(赤血球増多症)といいます。
一般に男性でヘモグロビン値18g/dL以上、または、ヘマトクリット値 51%以上、女性でヘモグロビン値 16g/dL以上、または、ヘマトクリット値 48%以上が多血症と定義されます。
いわゆる血液が「濃い」状態で、赤血球量の増加、血液粘稠度の上昇に伴って(血液がドロドロになって)、高血圧や、心筋梗塞、脳梗塞などの血栓症を引き起こすリスクとなりうるので、注意が必要です。

多血症の症状

多血症の状態が軽度だと症状が自覚できないことも多いですが、主な症状としては以下のようなものがあります。

多血症の主な症状
  • 手足のしびれ、麻痺がある
  • 頭痛がする
  • めまいや立ち眩みがする
  • すぐ息が切れる
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • いびきがひどい
  • 朝起きるのがつらい、眠い
  • 視力障害
  • 思考力減退
  • 原因不明の発熱・発汗
  • 入浴後のかゆみ
  • 四肢の発赤と痛みがある

多血症の原因

貧⾎は、赤血球のもとである「鉄分」の不足によるものというイメージが強いかもしれませんが、赤血球・ヘモグロビンが作られない場合、なくなってしまう場合など、実はさまざまな原因があります。

喫煙

多血症の最も多い原因は喫煙です。タバコを吸っているときに発生する一酸化炭素は、酸素と比べ200倍ヘモグロビンと結びつきやすいため、体内が酸素不足に陥り、それを補おうとして赤血球が増加します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠時無呼吸症候群も多血症の重要な原因です。
無呼吸によりANPという利尿ホルモンが多く分泌されることで尿の夜間尿が増え、脱水状態になり血液が濃くなることによるもの、そして、睡眠中にたびたび呼吸が止まることで低酸素状態になることで、エリスロポエチンというホルモンが増える事で、結果的に赤血球が増え、多血症になります。
睡眠時無呼吸症候群は高血圧、脳梗塞、心筋梗塞や突然死のリスクとなります。早期の治療をおすすめします。

エリスロポエチン産生腫瘍

肝細胞癌、腎細胞癌、脳腫瘍(血管芽腫)、子宮平滑筋腫、褐色細胞腫などの腫瘍が造血ホルモンであるエリスロポエチンを過剰に作ることで、多血症を来している場合があります。採血でエリスロポエチンを直接測定することで診断します。

真性多血症(PV)

赤血球を作る細胞が腫瘍性に増殖する血液がんの仲間「真性多血症(PV)」という血液疾患が原因のこともあります。

その他

利尿薬の使用や、嘔吐・下痢などによる脱水状態などが原因とも考えられます。

多血症の種類

相対的多血症

喫煙の習慣がある、慢性的なストレスを抱えている、重度の脱水などがある場合は、血液の濃縮によって見かけ上多血症となることがあります。見せかけだけ赤血球が増加しているようにみえますが、循環血漿量が減少しているために増加しているように見えるだけの状態です。典型的な像としては、赤ら顔でやや小太り、高血圧や不眠があり、ほぼ全例で喫煙者といわれています。

二次性多血症

心臓や肺の病気、高山での生活などによって慢性的な酸素欠乏にある場合に酸素をより効率的に運ぼうとして多血症となります。「組織の低酸素状態」、「エリスロポエチン産生の異常亢進」の2つが大きな原因となります。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の方がなることが多い多血症です。

真性多血症(PV)

血液を造る造血幹細胞が異常増殖することによって、際限なく赤血球が作り続けられてしまう「真性多血症」という血液疾患です。血液のがんの一つです
赤血球系の幹細胞だけでなく、全種類の血球(赤血球・白血球・血小板など)が過剰生産されますので3系統とも増加します。
真性多血症で過剰産生される血球は構造や機能において正常なことが特徴ですが、血球成分が増加することで血液の粘性が強くなり、細い血管を通過しにくくなります。原因は造血幹細胞の遺伝子変異によるもので、95%を超える真性多血症患者にJAK2遺伝子の突然変異が見られています。

多血症の治療

多血症の治療は、まずは血液検査を行い、原因に応じた治療法をご提案させていただきます。
真性多血症の治療では、体内から血液を抜き取る瀉血(しゃけつ)という治療を行い、血液量を減らすことで赤血球の数をコントロールするのが一般的な治療法と言われております。また、血液を作り出す造血幹細胞の働きを抑えるために分子標的剤(JAK2阻害剤)や抗がん剤を使うこともあります。
当クリニックでは、血液内科専門クリニックとして、患者さま一人ひとりの症状にしっかりと向き合い、最適な治療を提供させていただきます。

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