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いくら寝ても眠いのは貧血と関係ある?

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いくら寝ても眠いのは貧血と関係ある?
「寝ても寝ても眠い」「いつも疲れている」「少し動くと息切れする」…こんな悩みをお持ちではありませんか?もしかしたら、それは貧血が原因かもしれません。
今回は、「いくら寝ても眠い」という悩みを持つ方のために、貧血と眠気の関係について、血液専門医が詳しく解説します。

眠気と貧血の関係

「どれだけ寝ても眠い」「日中も眠気がひどい」と感じる方は、もしかしたら貧血が関係しているかもしれません。
貧血は血液における赤血球やヘモグロビン不足状態を指し、酸素が十分に身体中に運ばれないことから、倦怠感や眠気がひどくなることがあります。

貧血による眠気のメカニズム

いくら寝ても眠いと感じる原因の一つとして、貧血が挙げられます。
ここでは、貧血による眠気のメカニズムを詳しく説明します。

酸素運搬能力の低下

貧血の主な問題は、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足することです。
ヘモグロビンは鉄を含むタンパク質で、酸素を効率よく細胞に運ぶ役割を果たしています。
このため、ヘモグロビンが不足すると、全身への酸素供給能力が低下します。
酸素はエネルギーの生産に欠かせない要素であるため、運搬能力の低下は身体全体のエネルギーレベルを下げてしまいます。

脳への酸素供給不足

脳は私たちの体の中で最も酸素を必要とする臓器の一つです。
貧血により血中の酸素量が不足すると、脳が十分な酸素を受け取れなくなります。
酸素不足により、脳の機能は低下し、注意力や覚醒状態が損なわれることがあります。
この結果、日常的に眠気を感じることが増え、集中力の低下や記憶力の減退が起こってしまうのです。

エネルギー代謝の低下

細胞が酸素を十分に受け取ることで、エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)がミトコンドリアで生成されます。
貧血状態では、酸素が不足することによりATPの生産が滞りやすくなります。
エネルギー代謝が低下することで、全身が慢性的に疲労し、特に活動後や食後に強い眠気を引き起こすことがあります。

眠気の原因は貧血だけじゃない?

寝ているのに強い眠気を感じる場合、貧血以外にも様々な原因が潜んでいることがあります。

睡眠不足

一番に疑うことが多いのは睡眠不足です。
睡眠時間が取れていても、質の悪い睡眠の場合は、疲れが取れなかったり、眠気が出たりします。

ストレス

ストレスを抱えていると、自律神経が乱れ、眠りが浅くなったり、疲労感が増したりして、眠気を感じやすくなります。

生活習慣の乱れ

不規則な生活や食事、運動不足なども、睡眠の質を低下させ、眠気につながります。

その他の病気

甲状腺機能低下症、慢性疲労症候群、ナルコレプシー、うつ病、睡眠時無呼吸症候群など、様々な病気が原因で眠気が起こることもあります。
また、糖尿病患者も血糖値が急激に上昇、下降することで、強い眠気を感じることがあります。
ひどい眠気がある場合は様々な要因を疑い、適切に対処することが必要です。
特に他の病気の場合は、早期に病院受診が必要な場合もありますので、体調の変化を感じたら病院の受診をお勧めします。

貧血による眠気の特徴的な症状

貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が不足している状態です。
ヘモグロビンは、肺から取り込んだ酸素を体の隅々まで運ぶ役割を担っています。
そのため、貧血になると体全体に十分な酸素が行き渡らなくなり、様々な症状が現れます。
以下に、貧血による眠気の3つの特徴的な症状について、詳しく解説していきます。

食後のひどい眠気

貧血の人は、食後によく眠くなることがあります。
食事をすると、消化吸収をスムーズに行うため消化器官に血液が集中します。
消化器官への血流が集中すると、心臓から送り出される血液量が一時的に減少し、血圧が低下することがあります。
脳への血流が減少すると、酸素の供給も減少し、脳の活動が低下します。
これが、食後の眠気につながると考えられます。
貧血の人は、本来必要な酸素量が不足しているため、消化器官への血流集中による脳への酸素供給不足の影響を受けやすく、食後の眠気を感じやすくなります。

「疲れやすい」からくる眠気

貧血の人は日常的に疲れやすく、少し動くと息切れしたり、集中力が低下したりします。
身体全体に酸素が不足しているため、常に疲労を感じやすくなります。
また、脳への酸素供給が不足すると、脳の活動が低下し、集中力が低下します。
貧血の人は、脳への血流が不足しやすく、急に立ち上がったり、長時間立ちっぱなしでいると、めまいや立ちくらみを起こしやすくなります。
貧血による疲れやすさは、身体的な疲労感だけでなく精神的な疲労感も伴うため、眠気も強くなりやすいと考えられます。

生理が原因の眠気

女性は、生理中に貧血が悪化し、眠気やだるさを強く感じる場合があります。
生理によって血液が失われるため、鉄分が不足しやすくなります。
鉄分はヘモグロビンの構成成分の一つなので、鉄分が不足すると、貧血が悪化し、眠気やだるさが強くなる可能性があります。
また、生理中は女性ホルモンのバランスが大きく変化するため、自律神経の乱れや体調不良を引き起こし、眠気やだるさを助長する可能性があります。
生理中は、普段以上に休息を心がけ、鉄分を多く含む食品を摂取するようにしましょう。

要注意!危険な症状

よく「貧血で倒れた」「貧血で体がだるい」と聞いたことはありませんか?
実はその症状は貧血が原因でない可能性もあります。
これらの症状は、早急に対処が必要な場合もあるため、注意が必要です。

貧血で気絶することもある?

「貧血で倒れた」「電車に乗っている時に気分が悪くなって倒れた」と言う方が多くいますが、実は医学的には貧血が直接の原因ではないことが多いです。
例えば、貧血で倒れて一瞬気絶したという方は、脳貧血が疑われます。
脳貧血は、過度の緊張状態、精神的ストレスなどが原因となって自律神経である交感神経や副交感神経(迷走神経)のバランスが崩れた結果、血圧低下や徐脈を起こし、一時的に脳の血流が少なくなることによっておこるものです。
これは『血管迷走神経反射』と呼ばれ、自律神経の乱れによって血圧が急激に低下し、一時的に意識を失うことがあります。
ただし多量の出血が起きている場合は気絶やショックを起こすことがあります。
その場合はすぐに医療機関に受診をしてください。

慢性的な疲労

慢性的な疲労は、いくら休んでも体がだるく感じる状態を指します。
貧血が原因の場合、酸素不足がエネルギー生産に影響を与え、常に疲労感を感じやすくなります。
また、疲労が続くことで精神的にもストレスが増し、イライラや不安感、さらには鬱症状を引き起こすこともあります。
しかし、慢性的な疲労は貧血が原因だけではありません。
がんや糖尿病、精神疾患などでも慢性的に疲労が続くことがあります。
疲れやすい=貧血ではなく、他の疾患の可能性もあることを認識する必要があります。
慢性的な疲労がある場合は軽視せず、医療機関での専門的な診断を仰ぐことが何よりも大切ですし確実です。
もしも貧血が原因であれば、血液検査などで確認し、適切な治療を受けることで改善が期待できます。

貧血による眠気への対策

貧血による眠気を軽減するための対策には、食事療法、生活習慣の改善、そして飲み物の選択が重要です。
以下では、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

食事療法

鉄分を多く含む食材を摂取貧血、特に鉄欠乏性貧血の予防と改善には、鉄分を豊富に含む食材を積極的に摂ることが重要です。
赤身の肉、鶏レバー、魚介類、うれん草、豆類などは鉄分が多く含まれています。
ビタミンCの摂取で鉄の吸収を促進鉄分の吸収を高めるために、食事にビタミンCを含む食材を加えると効果的です。
レモンやオレンジ、イチゴなどの果物や、ピーマンなどの野菜を一緒に摂ることで吸収率が向上します。
非ヘム鉄とヘム鉄の両方を意識鉄には動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。
ヘム鉄の方が吸収率が高いですが、両方をバランスよく摂取することが重要です。

生活習慣の改善

規則正しい生活リズムを維持規則的な生活リズムを保つことで、体全体の調子を整え、眠気を軽減します。
毎日同じ時間に起床し、適切な睡眠時間を確保することが大切です。
適度な運動を取り入れる適度な運動は血液循環を良くし、酸素の運搬を助けます。
ウォーキングやヨガなどの軽い運動を生活に取り入れると良いでしょう。
ストレス管理ストレスは体調に悪影響を与えるため、リラクゼーションや趣味を活用して心の健康も維持しましょう。
ストレスを感じた時には、深呼吸や軽いストレッチがおすすめです。
禁煙・禁酒ビタミンCや胃酸は鉄分の吸収を助けますが、喫煙によってビタミンCを破壊したり、胃酸の分泌を抑えてしまいます。
また、アルコールの多飲によって、鉄分の吸収に必要なビタミン類の吸収が妨げられると、貧血を引き起こすことがあります。

コーヒーは貧血に良くない?飲み物の選択肢

カフェイン摂取を控える、または、摂取のタイミングの調整するカフェインにはタンニンと呼ばれる鉄の吸収を阻害する要素があるため、特に食事中や食後すぐのコーヒー、緑茶などのカフェインは控えることが望ましいです。
もし飲むのであれば、食事の鉄分を阻害しないよう、食間に適量摂取しないようにすることが大切です。
ハーブティーや鉄分強化飲料を選択カフェインの代わりに、鉄分の吸収を妨げないハーブティーや鉄分が強化された飲料を選ぶと良いです。

※一部の研究では、緑茶と水で鉄剤を服用した場合、鉄の吸収率に有意な差がなかったとの報告もあります。

医療機関への受診のタイミング

貧血症状が続く場合、または生活に支障を来すほどの眠気がある場合は、医療機関での受診を検討してください。
血液検査により、貧血の有無やその原因を特定し、適切な治療が提供されます。
特に鉄剤の処方や食事指導を受けることで、症状が改善されることが多いです。

まとめ

今回は、「寝ても寝ても眠い」という悩みを持つ方のために、貧血と眠気の関係について解説しました。
強い眠気が続く場合は貧血の可能性も疑い、医療機関を受診することをおすすめします。
貧血は適切な治療を行えば改善する可能性が高いため、少しでも体調の変化や不安がありましたら、お気軽に当クリニックまでご相談ください。

よくあるご質問

Q:貧血で眠い場合の対策はどうしたら良いですか?

A:まずは朝起きてから日光を浴びましょう。
日光にあたると、夜間に睡眠を深くさせる「メラトニン」というホルモンが分泌されるため、夜間に良質な睡眠が取れ、日中に眠くなりにくくなります。
また、記事内でも紹介した、バランスの良い食事やカフェインを控えるなどの対策が有効です。

Q:鉄分不足の場合、コーヒーは飲んではいけないのでしょうか?

A:飲んでも良いですが、摂取のタイミングに注意をしましょう。
食事中や食事の前後は、せっかく食事で鉄分を吸収してもカフェインによる「タンニン」という物質のせいで、吸収が悪くなってしまいます。
ただし、ある研究では、タンニンを含む食品+鉄を含む食品と一緒にクエン酸を飲んだり、後からクエン酸を飲むことにより、体内でタンニン鉄の生成を妨げたり、できたタンニン鉄を分解し、鉄の吸収が良くなるという結果も出ています。

参考文献

MSDマニュアル プロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/11-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E5%AD%A6%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%85%AB%E7%98%8D%E5%AD%A6/%E8%B2%A7%E8%A1%80%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81/%E8%B2%A7%E8%A1%80%E3%81%AE%E8%A9%95%E4%BE%A1

日本臨床研究医学会 貧血
https://www.jslm.org/books/guideline/36.pdf

老年者鉄欠乏性貧血患者の鉄吸収に及ぼす緑茶飲用の影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/27/5/27_5_555/_pdf

緑茶タンニンと鉄に対するクエン酸の作用 -お茶の研究Part6-
http://www.kagakunosaiten.jp/convention/pdf/2017/065.pdf

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