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老人性貧血の原因と予防法

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老人性貧血は死亡に至る場合も?原因と予防法を解説
貧血はよくある軽い病気と思われることが多いですが、高齢者にとって貧血は決して軽視できない病気です。
単なる倦怠感や息切れだけでなく、貧血の原因によっては死亡リスクを高める深刻な問題に繋がることがあります。
本記事では、高齢者の貧血がなぜ死亡リスクを高めるのか、その原因や予防策について詳しく解説します。

高齢者の貧血とは

貧血とは、血液中の赤血球数が減少し、体内に十分な酸素が運べなくなる状態を指します。
WHOにある貧血の定義では、年齢を問わずヘモグロビン濃度が男性は13g/dl未満、女性は12g/dl未満としています。
ただし、高齢になるとヘモグロビン濃度は低下するため、貧血を有する高齢者は男女を問わず、ヘモグロビン濃度が11g/dl未満を基準にすることが実用的と考えることもあります。
また、高齢者は様々な要因によって貧血になりやすく、その原因は一つとは限りません。
日常生活での活動量が低下することで、貧血の代表的な症状である動機や息切れ、倦怠感などの症状を感じないことがあります。
貧血が発覚した時には病状が進行している場合があるため、注意が必要です。

高齢者の貧血の原因

高齢者の貧血は、若い世代とは異なる原因が考えられます。

栄養不足

①鉄欠乏

・食事からの摂取不足
高齢者は食欲が低下したり、偏食になったりで、鉄分を十分に摂取できていないことがあります。
・消化器からの吸収不良
年齢とともに胃酸の分泌が減り、鉄分の吸収率が低下することがあります。
・慢性的な出血
消化管からの出血(胃潰瘍、大腸ポリープなど)が原因となることがあります。

②ビタミンB12欠乏

・胃酸の分泌低下や萎縮性胃炎
胃酸の分泌の低下や、胃粘膜が萎縮することで、ビタミンB12の吸収が悪くなります。

③葉酸欠乏

・食事からの摂取不足
葉酸を多く含む緑黄色野菜などを十分に摂取できていないことがあります。
・薬の副作用
一部の薬が葉酸の吸収を阻害することがあります。

慢性疾患

原因となる主な慢性疾患には、以下があります。

原因説明
慢性腎臓病腎臓の機能が低下すると、赤血球を作るホルモンの生産が低下し、貧血が起こります。
がんがん細胞が鉄分を奪い取ったり、骨髄に影響を与えたりすることで、貧血が起こることがあります。
慢性炎症性疾患関節リウマチ、慢性感染症などが原因となることがあります。

薬の副作用

・解熱鎮痛剤
解熱鎮痛剤を長期的に服用することで、骨髄の働きを抑制し貧血を引き起こすことがあります。
・胃酸分泌抑制剤
ビタミンB12の吸収を阻害することがあります。

高齢者の貧血の特徴

高齢者の貧血は特に症状に気付きにくい傾向があります。
また、様々な持病を持っている方が多いため、貧血の症状を見過ごしてしまう可能性があります。

症状が分かりにくい

高齢者は若い人に比べて、倦怠感や息切れなどの自覚症状が乏しいことがあります。
日常生活の活動量が少ないため、動機や疲労感を感じにくいです。
また、認知症の発症によりコミュニケーションが上手くとれないことや、食欲低下などがあると更に気付きにくく、他の疾患で病院受診をして発覚することも多くあります。

複数の原因が複合

高齢者の貧血は栄養不足だけでなく、慢性疾患や薬の副作用など、複数の原因が複合していることが多いです。
胃酸分泌や腸の機能が低下することにより、栄養素の吸収率が悪くなることや、慢性的な疾患により、貧血を悪化させてしまうことがあります。
またそれらは単一ではなく、複数の要因があるため、原因が分かりづらい傾向にあります。

基礎疾患の悪化

貧血が原因で、既存の心臓病や肺疾患が悪化する可能性があります。
貧血は、血液中の酸素運搬能力が低下している状態のため、長い間続くと各臓器に十分な酸素が供給されなくなり、様々な臓器の機能低下を引き起こします。

高齢者の貧血の種類

高齢者の貧血は、その原因によって様々な種類に分類されます。
それぞれの種類によって、症状や治療法が異なります。

貧血の種類説明
鉄欠乏性貧血最も一般的な貧血の種類です。鉄が不足することで、赤血球が十分に作られなくなり、貧血が起こります。
ビタミンB12欠乏性貧血ビタミンB12が不足することで、赤血球が大きく未熟な状態になり、貧血が起こります。
葉酸欠乏性貧血葉酸が不足することで、赤血球が大きく未熟な状態になり、貧血が起こります。
慢性疾患性貧血慢性的な炎症や感染症、悪性腫瘍などが原因で起こる貧血です。
骨髄異形成症候群骨髄で血液細胞が正常に作られなくなる病気です。
老人性貧血明確な原因が特定できない貧血で、高齢者に多くみられます。
薬剤性貧血服用している薬が原因で起こる貧血です。

高齢者の貧血の症状

高齢者の貧血は、若い世代に比べて自覚症状が乏しい場合が多く、気づきにくいことがあります。
しかし、放置すると様々な健康問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

一般的な貧血の症状

  • 疲れやすい
  • 倦怠感
  • 目眩やふらつき
  • 動悸
  • 息切れ
  • 顔色が悪い
  • 冷え性
  • 食欲不振

高齢者特有の症状

  • 認知機能の低下:物忘れ、集中力の低下
  • 抑うつ状態:意欲の低下、気分の落ち込み
  • 歩行困難:足がもつれる、ふらついて歩く

これらの症状は、貧血だけでなく、他の疾患によっても起こる可能性があります。
そのため、自己診断せずに医療機関を受診することが大切です。

高齢者の貧血チェックリスト

貧血は、高齢者にとってよくある問題ですが、自覚症状が乏しい場合もあり、放置すると様々な健康問題につながる可能性があります。
以下のチェックリストで、ご自身またはご家族の状態を確認してみましょう。
もし、以下の症状が複数当てはまる場合は、医療機関を受診することをおすすめします。

◆ 日常生活での変化

  • ☑ すぐに疲れてしまう、軽い運動でも息切れをする
  • ☑ 起床時や日中の倦怠感が強い
  • ☑ 特に立ち上がった時や動いた時に感じる
  • ☑ 心臓がドキドキする
  • ☑ 少し動いただけで息が切れる
  • ☑ 顔がぐんと白い、蒼白い
  • ☑ 手足がいつも冷たい
  • ☑ 食欲が減退し、体重が減る

◆ 行動の変化

  • ☑ 物事に集中できない、ぼーっとする
  • ☑ 些細なことでイライラする
  • ☑ 不眠や昼間に眠くなる
  • ☑ 階段の上り下りが辛い、歩くのが億劫になる

◆ その他

  • ☑ 爪が割れやすい、ひび割れる
  • ☑ 髪が抜けやすくなった
  • ☑ 口の端が切れる
  • ☑ 舌が赤く、ヒリヒリする

高齢者の貧血が死亡リスクを高める理由

高齢者の貧血は、単なる疲れやだるさだけでなく、様々な健康問題を引き起こし、死亡リスクを高める可能性があります。

心血管疾患のリスク増加

・心不全
貧血により心臓はより多くの血液を送り出すために働き、負担が増加します。
これが慢性化すると、心不全を引き起こす可能性があります。
・心筋梗塞
心臓への酸素供給が不足すると、心筋梗塞のリスクが高まります。

脳血管疾患のリスク増加

・脳梗塞
脳への血流が低下し、脳細胞が酸素不足に陥ると、脳梗塞を引き起こす可能性があります。
・脳出血
脳の血管が破れて出血するリスクも高まります。

免疫力の低下

貧血は、免疫機能を低下させ、感染症にかかりやすくなります。
高齢者は元々免疫力が低下しているため、貧血が重なるとより感染症のリスクが高まります。

生活の質の低下

・倦怠感
日常生活を送るためのエネルギーが不足し、活動量が低下します。
・食欲不振
食欲が減退し、栄養状態が悪化します。
・うつ状態
身体的な不調が精神的な状態にも影響を与え、うつ状態になりやすくなります。

転倒リスクの増加

・ふらつき
貧血によるめまい、ふらつきは転倒リスクを高めます。
・筋力低下
貧血により筋肉量が低下し、バランス感覚が悪くなることで転倒リスクが高まります。
高齢者の方が転倒し骨折してしまうと、長期間動けないことで身体機能が大きく低下する可能性があります。

その他の合併症

・認知機能の低下
脳への酸素供給不足が、記憶力や思考力の低下につながる可能性があります。
・骨粗鬆症
貧血と骨粗鬆症には関連性があるという研究報告もあります。

貧血の早期発見と治療の重要性

高齢者の貧血は放置すると死亡するリスクを高めるため、早期発見と早期治療が大切です。
特に高齢者の方は貧血の症状に気付きにくい傾向がありますので、下記を参考に早期発見及び早期治療をしてもらえたらと思います。

定期的な健康診断

高齢者の貧血は自覚症状が乏しいため、定期的な健康診断を受けることが非常に重要です。
健康診断では、血液検査を行い、貧血の有無や程度を調べることができます。
特に、基礎疾患を持っている場合や、薬を服用している場合などは、定期的な健康診断を受けることをお勧めします。

貧血の検査

貧血の検査では、主に以下の項目が調べられます。

検査項目説明
ヘモグロビン量血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量を測定します。
ヘモグロビン量が低いと貧血が疑われます。
赤血球数血液中の赤血球の数を測定します。
赤血球の数が少ないと貧血が疑われます。
ヘマトクリット血液中の赤血球が占める割合を測定します。
ヘマトクリットが低いと貧血が疑われます。
血清鉄血中の鉄の量を測定します。
鉄欠乏性貧血の診断に役立ちます。
フェリチン体内に貯蔵されている鉄の量を測定します。
鉄欠乏性貧血の診断に役立ちます。
ビタミンB12、葉酸ビタミンB12欠乏性貧血や葉酸欠乏性貧血の診断に役立ちます。

高齢者の貧血治療法

高齢者の貧血の治療法は、その原因によって異なります。
血液検査などの結果に基づき、その患者さんに適した治療法を選択します。
・鉄欠乏性貧血
鉄剤を服用することで、体内の鉄分を補います。
経口摂取が難しい場合や、効果が出にくい場合は、鉄剤の注射を行います。
・ビタミンB12欠乏性貧血
筋肉注射でビタミンB12を補給します。
・葉酸欠乏性貧血
葉酸の錠剤を服用することで、不足している葉酸を補います。
・慢性疾患に伴う貧血
腎臓病、がん、慢性炎症性疾患などの原因となる疾患を治療します。
・骨髄異形成症候群
重症の場合には、骨髄移植を行うことがあります。
また、悪性腫瘍が原因の場合には、抗がん剤治療を行います。

上記に併せて、食事療法や運動療法、十分な睡眠、生活習慣の改善をすることも治療の一環です。

貧血を予防する食事と生活習慣

ここまで説明してきた貧血ですが、予防するにはバランスの良い食事と規則正しい生活を送ることが何よりも大切です。
以下が貧血を予防する食品です。

項目含まれる食品
鉄分を多く含む食品・肉類(レバー、赤身肉)
・魚介類(あさり、牡蠣、マグロ)
・豆類(大豆、レンズ豆)
・緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜)
・海藻類(ひじき、海苔)
ビタミンB12、葉酸を多く含む食品・ビタミンB12:肉類、魚介類、乳製品、卵
・葉酸:緑黄色野菜、豆類、レバー

上記を参考にバランスの取れた食事や、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理が大切です。

まとめ

貧血は一見軽い病気に思われますが、放置すると命の危険がありますので、自覚症状が無くても治療をすることをおすすめします。
特に、貧血の治療は期間を要すため、早期発見と早期治療が大切です。
また、症状が無くても1年に1回は健康診断や定期検診を受け、規則正しい生活やバランスの良い食事を摂ることが健康的な生活を送る上で重要になります。
ご心配な方は、血液専門医が院長の当クリニックまでお気軽にご相談下さい。

よくあるご質問

Q:高齢者が貧血で入院することはありますか?

A:あります。
重度の貧血で息切れや動機、めまい、倦怠感が強く現れており、日常生活に支障をきたす場合や、原因不明の貧血により貧血が進行してしまう場合、基礎疾患と合併して命に関わる場合、輸血が必要な場合に入院の適応となる可能性があります。

Q:高齢者の貧血の余命は?

A:高齢者の貧血の余命は一概に決めることはできません。
貧血は様々な原因で起こるため、個々の状況によって大きく異なります。
余命について詳しく知りたい場合は、医師に相談することが大切です。

参考文献

高齢者の血球(数)異常(白血病・腫瘍性疾患を除く) 1.貧血・赤血球増加症 宮腰重三郎 (日老医誌 2014;51:510―516)
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_51_6_510.pdf

第 52 回日本老年医学会学術集会記録 〈Meet the Expert 2:高齢者診療のポイント〉 高齢者の貧血 大田 雅嗣 (日老医誌 2011;48:20―23)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/48/1/48_1_20/_pdf

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